おはようございます!
今回も前回に引き続き、
2/2に発売されたの英語翻訳版『鬼滅の刃』の最新20巻からピックアップ!
(なのでネタバレあります!)
前回は、最強剣士・継国縁壱の涙のセリフを取り扱いましたが、
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今回はもう一人の涙 がテーマです。
鬼狩りから上弦の壱の鬼・黒死牟になった
縁壱の双子の兄、巌勝(みちかつ)の涙ですね。
この、黒死牟の
「もうやめろ 私はお前が嫌いだ」を
『鬼滅の刃』英語翻訳版のネイティブ英語でどう訳された?という問題です。
問題
もうやめろ
I hate you.
私はお前が嫌いだ
※hate=嫌い
選択肢
①Not
②More
③Yet
④Enough
目次
答え
正解
もうやめろ
I hate you.
私はお前が嫌いだ
④の「Enough」が正解でした!
定型フレーズ「Enough already.」を使った英訳でした。
解説
「I hate you.」は「I love you.」の反対の表現で解説不要かと思いますので、
「Enough already.」(とenough)の解説と、黒死牟の涙のワケに絞ってやりますね!!
Enough already.
もうやめろ
「Enough already.」は
アメリカ英語(米語)の口語表現で、
「もう十分だ!」
「もうやめてよ!」
のように、相手の言い分を制するときに使う定番フレーズです。
作中では、
非の打ち所のない人格者かつ最強の剣士である縁壱の
(過去の言動や存在)を制したかった黒死牟の気持ちを表した言葉なので、
もうやめろ
=Enough already.
という英訳にした、というわけですね。
「enough」は
スペルはちょっとやっかいですが、
I have enough money.
=私は十分なお金を持っている
というように、「充分に」という意味でよく知られる単語ですね。
「形容詞」や「副詞」の他に、「代名詞」「間投詞」にもなります。
英単語
[形容詞]必要なだけの数・量、足りる、十分である、十分な
[副詞]必要なだけ、十分に、まずまず、十分に
[代名詞]十分な数・量、これ以上いらないほどたくさん
[間投詞]もうたくさんだ、うんざりだ
今回の巌勝(黒死牟)のケースは、「enough」に
「already(すでに、もう)」という副詞を追加する事によって、
enough=必要なほどある
already=もうすでに
で、
「もう十分だ」
という意味になるわけですね。
なので、
ネガティブ要素の強い表現になるワケです。
ポジティブな「enough」とネガティブな「enough」
「enough」の本質は、
何かをするために必要なほどの○○
ということです。
なので、
ポジティブな意味合いの文脈では、
There is enough members.
=メンバーは十分にいる
というような使い方ができる反面、
ネガティブな意味合いの文脈では、
I've had enough of my mother's kindness.
=母親の優しさにはうんざりだ
というような意味になり、
「enough」そのものよりも、
文脈や組み合わせでニュアンスが変わってくる扱いの難しい単語*ですね。
(*英語と日本語の単語をひとつひとつ対比させる人には)
「enough」を使う英会話表現
「Enough already」の他にも、
「enough」を使ったフレーズはいくつか存在します。
「Enough」を使う定番英会話表現
Enough already.
=もうやめろ
Enough is enough.
=もうたくさんだ
That's enough.
=もう十分だ、いいかげんにしろ
Enough said.
=もう言うな
Enough about ○○.
=○○についてはもう十分だろう
「Enough is enough(もうたくさんだ)」は、
ことわざ・慣用句的な表現で、
代名詞「enough(十分な事)」=形容詞「enough(十分にある)」なので、
ウンザリしたときのネガティブ表現ですね。
「enough」が二つなんてくどい感じがしますもんね。
「That's enough」は、
会話で話を切り上げたいときによく使われます。
産屋敷耀哉
That is enough talk on this subject.
炭治郎の話はこれで終わり
お館様(産屋敷耀哉)はスローペースで話すので、
「That's」じゃなく「That is」になっているのもポイントです。
竈門炭治郎
P-please... Rengoku... That's enough.
煉、煉獄さん もういいですから
こちらは「うんざり」はしていなくてむしろ、
大怪我しているんだから「もう止めて」という感じの「enough」ですね。
このように、
「enough」は文脈でニュアンスが変わってくるので、
意味を丸暗記するのではなく、
実際の英文で使われている場面に慣れ続ける、英語の呼吸・常中の心意気が大切です。
コラム:黒死牟の涙と、縁壱という名の「enough」
作中では、
最強の剣士でありつつも、非の打ち所のない人格者であり、
80を過ぎた今でも、
少年の時に巌勝が渡したオモチャの笛を大事に持ちつづけていた「美しき心」を持つ弟・縁壱と、
縁壱のようになりたくてなれずに、
「家を捨て妻子を捨て人間である事を捨て」
鬼にまでなった「餓鬼のような心」を持つ自分(巌勝)との
同じ日に生まれた双子の兄弟の「生き様」の、
それこそ使う呼吸と同じ、
「太陽と月」のような対比関係が描かれています。
(国語の言い方をすると「隠喩」です)
それを一番間近で見てきた巌勝は、
人間を捨てた「鬼」として、鬼狩りの弟から恨まれることは覚悟の上だったはずです。
にもかかわらず、
縁壱からは責められる事もなく、
「お労しや兄上」と憐みの涙を流されたわけです。
罵詈雑言を言ってくれた方が気が楽だったに違いありません。
しかも縁壱は、
25歳になったら死ぬことを恐れて鬼になった自身と違い、
痣者になったのに80歳を超えても生き長らえ、
なおかつ、
鬼なってずっと修行し続けた自分よりも尚強い。
もう、十分だろうと。
なんなんだお前はと。
「もうやめろ」と。
そう、
これがまさに「enough」なんですね。
縁壱の存在そのものが巌勝にとっての「enough」なんです。
そして(すやこ以外で)一番身近にいた巌勝は、
そのことをすでに(already)十分感じていた。
だから、
「最初から十分わかってるんだ、だからもう、これ以上自分より優れた部分を見せないでくれ」
という意味での
「もうやめろ=Enough already.」
であり、
そこで必要だったのが、
「私はお前が嫌いだ=I hate you.」という、
自分の本当の感情を押し殺すための言葉だったわけです。
でも、
憎しみに駆られていた心も、
縁壱が少年の時の心のまま純真無垢でいた証である「笛」を見た際に、
鬼になって消えたはずの、
自分の中に残っていた「兄・巌勝の心」が、
「鬼・黒死牟の目」に涙を流させたのです。
それは、
言葉とは真逆の本心、感情がそこにあったからでした。
「私はただ、縁壱、お前になりたかったのだ」
素直になれなかった心が、
流させた涙でした。
最期、黒死牟(巌勝)は、
全てを捨ててきたのに、
But even all that wasn't enough.
ここまでしても駄目なのか
・・・とこれまでの人生をふり返りました。
縁壱という「enough」に、
達する事が出来なかった(=wasn't enough)自分だった、と。
つまり、
「enough」というのは、
自分の中に「基準」があって、それが十分満たされている、
ということで、
巌勝(黒死牟)の不幸は、
世界に一人しかいない双子の片割れに、
素直に憧れられればポジティブな「enough」だった感情が、
「巌勝」という勝つ事にこだわって名づけられた「兄」という呪縛が、
ネガティブな「enough」となって彼の人生を包んでしまった、
というところにあるのかもしれません。
今日のまとめ
単語の「意味」は「辞書」に書いてありますが、
実際には「文字」で書かれた意味以上のものがそこにはあります。
「enough」が辞書を調べると、
もの凄い長い文で説明されている事がわかると思いますが、
巌勝(黒死牟)にとっての縁壱が「enough」
ということをおぼえておく、というのも一つですよ!!
今日の言葉
Enough already.
もうやめろ
I hate you.
私はお前が嫌いだ