鬼滅の名言を英語で! 『鬼滅の刃』研究・考察

「遊郭」とは?意味は?~『鬼滅の刃』英語版から炎上「遊郭」編の扱いを考える

鬼の棲む遊郭だよ

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なんだか一部で、

鬼滅の刃「遊郭編」が炎上しているそうですね。

 

「遊郭」

という言葉を前面に出すのはどうかと。

 

それに対して、

過激な意見もあるけれども、言われてみれば、たしかに一理あります。

 

基本的に、「遊郭」なんて言葉は、

文学や時代劇ぐらいしか出てきませんが(鬼滅はそもそも時代劇ですが!)、

時代劇でも「遊郭」ではなく地名の「吉原」と言うことが多いように、

あまりおおっぴらに「遊郭」ということは少ない気がします。

 

そもそも「遊郭」って何?

鬼滅の刃「遊郭編」の公開が決まり、

親御さんの中には、

「子どもにどうやって説明しよう」
「見せちゃマズくない?」

と心配されている方もおられるそうですが、

 

そもそも、

マンガで「遊郭」とバーンと書いているので、

あまり気にせず、

「そういう名前の場所」と説明するだけでいいと思いますよ

 

「無限列車編」だってほとんどの方が、

何が「無限」だったかほとんどの人は気にしてませんし
(なぜ「夢幻」じゃなかったのか?)

 

「遊郭」の説明は原作にあり

そもそも、

「遊郭」の説明ってどうしよう?

 

と思う方はきっと、

原作マンガを読んでいないか、アニメ版しか見ない方、子どもだけが「鬼滅」を見ている方なんでしょうね。

 

というのも、「遊郭」の説明は、

原作で1ページ分使ってしっかり説明されているんです。

「遊郭」とは?

吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第9巻(集英社)

吉原 遊郭
男と女の見栄と欲 愛憎渦巻く夜の街

遊郭・花街は その名の通り一つの区画で街を形成している

ここに暮らす遊女たちは貧しさや借金などで売られてきた者が殆どで
たくさんの苦労を背負っているが
その代わり衣食住は確保され
遊女として出世できれば裕福な家に身請けされることもあった

これ以上なくうまくまとめられているので、

相手が小学生の場合、

これ以上の説明を親御さんからする必要はないでしょう。

 

「遊郭」の意味を説明した理由

普段マンガを読まない方はご存じないかもしれませんが、

週刊マンガで1ページ使うって相当な事です。

 

たとえばこの回は、

表紙除く20ページ中の1ページを「吉原遊郭」、

次の1ページを「花魁」の説明に使っています。

 

つまりその回の、

10%を「遊郭・花魁」の説明に費やしているんですね。

 

青年マンガだったらこんなことありえないので、

少年マンガの中で、わかりやすく、問題がないように

マンガの作者・吾峠呼世晴氏(♀)と編集者の方が、精一杯考えた非常によい説明だったなと思います。

 

むしろ、逆に、

「なぜ、貧しさや借金で売られなければいけなかったのか?」
「なぜ、衣食住を確保されることがそんな大事なのか?」

現代の日本では考えられない、過去の歴史背景を知ることの方が大事です。

 

そういうことをしないと、

「女は男に従うもの」という男尊女卑感のかたまりのような人間になることだってありますよ。

(実際、原作にもそういう価値観のキャラが回想で出てきます)

 

また、遊郭の説明を事前にしておくことで、

遊郭という「街」が存在し、

その中で産み出された「不幸」から「鬼」が生まれた

・・・という、「遊郭編」の裏テーマをしっかり感じ取れるようになるんですね。

 

英語版での「遊郭」の取り扱いから遊郭を考える

ここは「鬼滅の刃で全集中・英語の呼吸」というブログですので、

ここからは英語の話を絡めながら、英語での「遊郭」の取り扱いの話をしていきます。

 

「英語版」で消えた「遊郭」

実は前回

アニメ「遊郭編」のPVで宇髄天元のセリフに充てられていた

先ほどの遊郭の説明の1コマ目の、

吉原 遊郭
男と女の見栄と欲 愛憎渦巻く夜の街

の部分を、鬼滅の英語版『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba』でどう訳されたかを紹介しました。

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そしてその中で、

「遊郭」という部分に相当している訳がどこにもなかったんです

 

そう、サラッと消されているんです

 

「遊郭」を英語で?

「遊郭」に該当する言葉がないわけではありません。

 

英語では「遊郭」の訳を、

「a licensed district(合法地区)」もしくは

「a licensed red-light district(合法の赤灯地区)」と言い、

政府に認められた「赤ランプ」が灯された地区(district)だと表現されます。

(それを受けて日本では「赤線地区」と言い、非合法の地区は「青線」と言った)

 

英語版Wikipediaでも、「遊郭」の説明に、

Yūkaku (遊廓) were legal red-light districts in Japanese history
(遊郭は日本の歴史の中での合法的な赤ランプ地区だ)

(出典:「Wikipedia英語版」より。訳は追記)

というように、「legal」と「licensed」という違いはあれど同じように「red-light district」と説明されています。

(ちなみに「遊郭」は日本各地にあったので、英語の説明では複数形になってますね)

 

ちなみに「赤ランプ」というのは一つの目印で、

諸説ありますが、船乗りたち向けの売春宿の赤灯籠から赤ランプに変わったという説もあるようですが、イマイチハッキリしません。

赤ランプ

赤ランプ築をイメージしたポスター(出典:英語版Wikipedia)

 

日本語の「遊郭」も、

「郭(くるわ)」と呼ばれる囲いのある地区で「(大人の)遊び」をするという意味でしょうが、

歴史が古すぎて誰が言い出したかは不明です。

 

いずれにせよ、

「そこ」を指す一つの目印、いわば「隠語」に近い扱いだったわけですね。

 

だから、

「遊郭編」と大々的に言うのはどうか、という意見が出るのもわかります。

大人の(男の)「建前」があって、その裏側に存在するものだからですね。

 

なので、

「吉原」とか「花街」とか「色街」という言葉で代用することが多いわけです。

花街

吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第9巻(集英社)

 

鬼滅英語版で、「遊郭」はどう訳されているのか?

さて、そんな「遊郭」ですが、

先ほどのコマ以外で登場した「遊郭」は、

他のシーンではどう訳されているのか気になりますよね?

 

ならなくても、

私が気になるので調べてみましたよ

 

まずは最初に「遊郭」が出たシーンですね。

単行本8巻の宇髄のセリフの「遊郭」は、目的地ですからさすがに省略できないので、しっかりと「訳」が入っています。

宇髄天元

It's an entertainment district where demons dwell.
鬼の棲む“遊郭”だよ

 

「エンターテイメント地区」!

 

まさかそんな訳し方があるとは!!

という感じですね。

 

たしかに「派手」感はハンパなく伝わります。

 

なお、

この後に登場する「遊郭」も基本、

宇髄天元

Once in the entertainment district, I'll gather information on the demon, while you keep your eyes open for women that I can marry.
遊郭に潜入したらまず俺の嫁を探せ 俺も鬼の情報を探るから

Once~, ~の文の訳し方は、別のページで解説

というように、

「entertainment district」で統一されています。

 

これは、

「entertainment」

「entertain(楽しませる、接待する)」という動詞を名詞化したものだからでしょうね。

 

英単語

entertainment
[名詞]娯楽楽しみ気晴らし、余興、演芸興業ショーもてなし接待歓待

という風に、

「遊郭」のエッセンスを多分に含んでいるため、

日本語の「エンターテイメント」に「接待」という意味はありませんが、

「遊郭⇒entertainment district」の訳にしたのでしょう。

 

「遊郭」の「遊」のイメージと似ていますしね

 

では「花街」は英語で?

ちなみに

「遊郭」の別の言い方となっている「花街」はどう訳されているかですが、

「花街=Hanamachi」です!!

隠語はそのままです!

 

ただ、

英語圏の人にとって隠語でも何でもないため

このシーンのように「Hanamachi」の解説があればそれでも意味が想像できますが、

原作で「花街」と書いてあっても、

基本的に「entertainment district」に置き換えられて訳されています

 

また、

「遊郭・花街」と連続して使う場合は、

ナレーション

The Hanamachi entertainment district is, as its name suggests, a specialized section of town.
遊郭・花街はその名の通り一つの区画で街を形成している

 

というように、

「遊郭・花街=The Hanamachi entertainment district」として訳されています。

 

ちなみに花魁は?

「花魁(おいらん)」は、

日本の「文化」として外国にも紹介されているので、

「oiran」のままです。

鯉夏花魁

Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.9

宇髄天元

That's Konatsu-an oiran from house Tokito.
「ときと屋」の“鯉夏花魁”だ

 

 

なぜ、そこまで「遊郭」を隠すのか?

このように英語版では

これでもかと言うほど「性風俗」のエッセンスをカットした表現になっています。

 

実際に

「遊郭=red-light district」と訳そうものなら、

「red-light district」で調べてしまって、そうすると、

A red-light district or pleasure district is a part of an urban area where a concentration of prostitution and sex-oriented businesses, such as sex shops, strip clubs, and adult theaters, are found.

(出典:「Wikipedia英語版(Red-light district)」より)

というような言葉がググれてしまうからですね。

 

日本よりもアメリカはそういった「規制」が厳しいので、

そういう表現を極力排除しないと「マンガ」として売れないのですね。

 

また、「セックスワーク」についての位置づけは国によって違うこともあるので(合法とする国もあれば、奴隷とする国もある)、原作同様、その辺も配慮したのかなという印象です。

 

 

まとめ:子どもに「遊郭」をどう説明したら?

英語でも極力意味がわからないようにされてしまう「遊郭」。

 

詳しく調べるならいくらでも調べられますので、

「勝手に調べろ」と言えば済むといえば済みます。

(性にまつわるものは、「文献」をちゃんと調べさせた方が「間違い」は減ります)

 

逆に幼稚園児や、

学校での性教育が始まっていない子とかにこれを、

わかりやすく説明してと言われたらどうしましょう?

 

これはあくまでも私の私見で、実際に役に立つかは不明ですが、

英語版の「entertainment district」になぞらえて、

「昔の“大人の遊び”ゾーン」だよ

と説明してはいかがでしょうか?

 

え? ダメ??

 

「昔の」「大人の」と強調することが大事かなと。

ヘンに憧れることも、ヘンに蔑視することもなく、「非日常」の場所

 

まさにそれが「遊郭」であり、

「男女平等」なんて言葉がなかった時代に、

武士や商人など、金を持った男たちが女を買うことでやっと暮らしていける人たちがいて、

その中で織りなされる人々たちのドラマ、

そこで生まれた「鬼」、その鬼を産んだ「背景」、

 

「大正時代」という時代だったからこそ描けたドラマがまだそこにはあって、

 

現代にはなくなった「世界」がそこにあって、

それでも「大切なもの」は今と変わらなくて

 

今はそれがわからなくても、いつかきっとわかる日が来る

 

そう思って、

子どもたちを信じて、

見守っていくことが大事かなと思います。

 

女性の本音?

ふと思ったのですが、

『必殺仕事人』など、

吉原で下心満載な男に「天誅」が下るのは時代劇の定番ですが

 

吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第9巻(集英社)

この、見るからに「遊郭」を下心100%で利用している「スケベ男代表」

この後不幸が起こるのですが、

このシーン、

一人の女性としての作者が、

キャラクターを通じてスケベ100%男に「天誅」を喰らわせているような気がするのは、私だけでしょうか?

(1ページまるまる使ってるし!)

 

 

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