『鬼滅の刃』に登場するキャラクターの中で、
主人公の竈門炭治郎が属する「鬼殺隊」の最高幹部である「柱」は、どれも個性派揃い。
今回は、
今年アニメ化される事が決まった「遊郭編」でやっと見せ場が登場する、
音柱・宇髄天元(うずいてんげん)さんの強烈な個性がわかるコチラのシーンから。

吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第9巻(集英社)
上官なのにまったく敬う気持ちがない炭治郎たち(宇髄からするとバカチンたち)に対して、
いかにわかりやすく、「上官のスゴさをわからせ、従わせるか」をまとめて熱く語ったシーンですね。
この、「いいか?俺は神だ! お前らは塵だ!」を
『鬼滅の刃』英語翻訳版のネイティブ英語でどう訳された?という問題です。
問題
All right... I am a god!
いいか?俺は神だ!
You guys are( )!
お前らは塵(ごみ)だ!
ヒント:「ごみ」の一般的な米語です!
目次
- 答え
- 解説① 基本表現ネイティブ風
- 解説② どうせなら全部の訳を見てみよう!
- First, get that into your heads! まず最初はそれをしっかりと頭に叩き込め!!
- Drill it in there! ねじ込め!!
- If I say be a dog, you act like a dog! If I say be a monkey, act like a monkey!! 俺が犬になれと言えば犬になり 猿になれと言ったら猿になれ!!
- First and foremost, you must please me! Bow and scrape and avert your eyes! You toadies are mine, body and soul! 猫背で揉み手をしながら 俺の機嫌を常に伺い 全身全霊でへつらうのだ
- 今日のまとめ
答え

Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.9
正解
いいか?俺は神だ!
You guys are trash!
お前らは塵(ごみ)だ!
First, get that into your heads!
まず最初はそれをしっかりと頭に叩き込め!!
Drill it in there!
ねじ込め!!
If I say be a dog, you act like a dog!
俺が犬になれと言えば犬になり
If I say be a monkey, act like a monkey!!
猿になれと言ったら猿になれ!!
First and foremost, you must please me! Bow and scrape and avert your eyes! You toadies are mine, body and soul!
猫背で揉み手をしながら 俺の機嫌を常に伺い 全身全霊でへつらうのだ
「trash」が正解でした!
解説① 基本表現ネイティブ風
All right... I am a god!
いいか? 俺は神だ!
I am a god!
=俺は神だ!
は非常に例文にピッタリの表現ですね。
「神」は基本的に複数存在して、その中の1人なので、
一つを意味する冠詞「a」をつけて「a god」にするのがポイントです。
前につく「all right」は
Are you all right?
=大丈夫?
とか
It's all right.
=大丈夫だよ
のように、一般的には日本語の「大丈夫」という意味が充てられる熟語ですが、
文頭に持ってきて
「おい」「それでは」「よろしい」「いいか」というような意味合いの注意喚起としても使える表現なんですね。
ですからここでは、
原作の「いいか?」という注意喚起に、
「All right」が使われている、ということなんですね。
You guys are trash!
お前らは塵(ごみ)だ!
英語は「You」の複数形も「You」になるので、それでも通じるのですが、
「お前ら」という風に特に強調したい時は、「You guys」という表現を使います。
特にアメリカ英語(米語)で好まれる表現ですが、最近ではイギリスでも使う人もいるそうです。
「trash」はアメリカ英語での一般的な「ごみ」ですね。
「garbage(ガベージ)」という単語も「ごみ」の訳ですが、
こちらは台所で出るようなゴミ(生ゴミとか容器とか)を指すので、
宇髄さんの言う「お前らは塵だ」は
生ゴミという意味ではなく、
存在として「無価値」で「最下層」という意味だから「trash」となったわけです。
なお、「trash」には日本語の「ゴミ」「クズ」と同じように、
英単語
[名詞]ごみ、くず、がらくた、駄作、人間のくず
「人間としてくず」という意味もあるので、
このシーンで使うにはピッタリな訳語でしょうね!
ちなみに「trash」は、
数えられない名詞(不可算名詞)なので、「You guys」と複数形が来ても「trash」はそのままです!
解説② どうせなら全部の訳を見てみよう!
長ゼリフで英文を見るのもツラいかと思いますが、ひとつひとつ訳を見てみると、面白い訳し方をしているので、勉強になりますよ!!
文は難しくありませんが、見慣れない単語や表現がありますから、その辺をしっかり解説していきますね!
First, get that into your heads!
まず最初はそれをしっかりと頭に叩き込め!!
「First, ~」から始まる、「まず最初は」という定番表現ですね。
「Second, ~」と続くこともありますが、この場合は原作同様なかったですね。
(第2などないから??)
get that into your heads!
=それをしっかりと頭に叩き込め!!
は、動詞「get」から始まる命令文です。
「get」は非常に多くの意味を持つ単語なので、日本語的に理解しようとするのは難しいですが、
I get it./I got it.
=わかった
という表現があるように、文字通り「手に入れる」というだけじゃなく、
自分に「(要領を)得る」「理解する」という意味でも使われます。
理解の「get」はアメリカ英語、とくに会話で好まれる表現で、
前置詞「into」を後に続けて
「get ~ into=~を頭に入れる」
という熟語として使われることもあります。
熟語としておぼえるのが難しい人は、バラバラに考えてもよくて、
get=得ろ
that=それを
into your heads=お前らの頭の中に
ということで、
get that into your heads!
=それをお前らの中に入れておけ
(原作)それをしっかりと頭に叩き込め!!
という「命令」文が出来上がるんですね。
口語表現を使う事で、部隊の上官からの命令ではなく、
「凄い自分に従え、クソバカ共が」
という宇髄の雰囲気を醸し出しているわけですね。
Drill it in there!
ねじ込め!!
「drill」はなかなか学校英語ではあまりお目にかかりませんが、
日本語読みしたものは有名です。
小学生から散々聞いてきたイヤな言葉、
「ドリル」ですね。
英単語
[名詞]ドリル、キリ、問題練習、訓練
[動詞]穴をあける、くり返し教えこむ/練習させる、叩き込む
子どもの頃から何気なく「漢字のドリル」「算数のドリル」と言っていますが、あれ、
「ドリルのように反復してくり返す」
という動詞から生まれた名詞なんですね。
私は高校の時、
部活で「ドリル練習」というのがあったのでそこで初めて「本当の意味を知った」わけですが、
穴をあけるドリルと、宿題のドリルは同じだった、というのも面白い話ですね。
今回は、
「ドリル」という名詞ではなく、
「ドリルで掘る、くり返し叩き込む」という動詞として、
Drill it in there!
=そこにそれをくり返し叩き込め!!
(原作)ねじ込め!!
と、宇髄の「教え」を
ドリルのように奥までグリグリとねじ込めよという意味なので、
「drill」という動詞を使った命令文にしているんですね。
If I say be a dog, you act like a dog! If I say be a monkey, act like a monkey!!
俺が犬になれと言えば犬になり 猿になれと言ったら猿になれ!!
仮定の話なので「If」を使った文ですね(仮定法)。
「be a dog」「be a monkey」はそれぞれ「犬になれ」「猿になれ」という、
be動詞を使った命令文です(だから原形のbe)。
If I say "Be a dog"
=(もし)俺が「犬になれ」と言えば
If I say "Be a monkey"
=(もし)俺が「猿になれ」と言えば
のように考えるとわかりやすいですね。
「act like」は、
動詞「act=行動する」
副詞「like=~のような」
を組み合わせた熟語で、「ふるまう」という表現になります。
英熟語
=○○のようにふるまう
今回は、
you act like a dog
=犬のようにふるまえ
you act like a monkey
=猿のようにふるまえ
ということで、同じような表現をくり返すことで、原作の日本語の、息もつかせぬ命令口調を再現しているわけですね。
(原作をアニメ化する時のアフレコが大変だと思うので、ある意味注目ですね!)
First and foremost, you must please me! Bow and scrape and avert your eyes! You toadies are mine, body and soul!
猫背で揉み手をしながら 俺の機嫌を常に伺い 全身全霊でへつらうのだ
「猫背で揉み手をしながら」
という表現がいかにも日本語的なので、
そのまま「猫背=stoop」などと訳したりせず、
精一杯へつらっている感じが伝わるように、「意訳」されていました。
3つの文に分かれていたので、解説もわけますね!
First and foremost, you must please me!
最初の「first and foremost」は定型表現で、
最初に紹介した「First,(はじめに)」よりも上位の
「まず真っ先に」という意味になります。
英熟語
=まず真っ先に、なによりもまず、いの一番に
「please」は「お願い」ではなく、
助動詞「must」の後に来ているので、
「満足させる、喜ばせる」という意味の動詞ですね。
英単語
[間投詞]どうか、どうぞ、お願いします
[動詞]喜ばせる、満足させる
ここでは、
First and foremost, you must please me!
=何よりもまず、お前たちは俺を喜ばせないといけない
という感じで使われているんですね。
Bow and scrape and avert your eyes!
続きの「bow and scrape」は、
bow=おじぎする
scrape=こすりつける
という動詞を組み合わせた熟語で、「ペコペコする」という意味ですね。
「scrape」は、
窓掃除に使う「スクレイパー(scraper)」の語源です。
さらに
avert=目をそらす
your eyes=お前らの目
を追加して、
Bow and scrape and avert your eyes!
=ペコペコして目を合わせるな
という意味にしているんですね。
You toadies are mine, body and soul!
最初の「You guys」もそうでしたが、
「You ○○」は、「○○なお前(たち)」みたいな感じで使う表現ですが、
今回使われていたのは「toadies」。
これは「toady=ごますり、おべっか使い」という名詞の複数形で、
You toadies are mine
=お前らおべっか使いは俺の物だ
という感じの意味になりますね。
最後の、
「body and soul」
は2000年代のJ-POPにありがちな表現ですが、
body=身体
soul=精神
で、
body and soul
=身も心も
という意味になって、「全身全霊」の訳として使われることもあります。
これを最後にくっつけることで、
You toadies are mine, body and soul!
=お前らおべっか使いは、身も心も俺の物だ
という意味になるんですね。
「そのまま」ではなく、英語圏の人にニュアンスが伝わるように訳されていましたが、なんとなく意味は通じますよね??
今日のまとめ
こういった、「汚い言葉」は、ネイティブらしい表現がたくさんつまっているので、訳すのに苦労します。
が、それでもあえて「その単語」を使っているところから、
「get」とか「drill」とか、単に訳をおぼえるのではなく、その単語が持つ「イメージ」をしっかりおぼえておくといいでしょう!!
今日の言葉
All right... I am a god!
いいか?俺は神だ!
You guys are trash!
お前らは塵(ごみ)だ!
First, get that into your heads!
まず最初はそれをしっかりと頭に叩き込め!!
Drill it in there!
ねじ込め!!
If I say be a dog, you act like a dog!
俺が犬になれと言えば犬になり
If I say be a monkey, act like a monkey!!
猿になれと言ったら猿になれ!!
First and foremost, you must please me! Bow and scrape and avert your eyes! You toadies are mine, body and soul!
猫背で揉み手をしながら 俺の機嫌を常に伺い 全身全霊でへつらうのだ