今回は、
「比較表現」シリーズの第2弾、「最上級」です。
「比較表現」とはそもそも何かという話もありますので、
前回の第1弾「比較級」をご覧になっていない方は、
まずはそちらをご覧くださいませ。
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それではいきましょう。
今回は「最上級」です。
目次
「最上級」とは?
そもそも、
比較表現は、比較対象によって、以下の三つに分類されます。
- 「~の中で一番上」という表現⇒「最上級」
- 「~より上」という表現⇒「比較級」
- 「どれも同じ」という表現⇒「原級(同格)」
前回は、2の「比較級」をやりましたが、これは、
AとBを比べて、Aの方が上ですよ、という表現でした。
今回は、1の「最上級」ですが、これは、
Aと他を比べて、Aが一番(=最上)ですよ、という表現です。
比較表現は、
前回の「比較級」で、
「形容詞・副詞(の比較級)」を使うと言いましたが、
「最上級」もそれは同じで、
「形容詞・副詞(の最上級)」を使います。
ただ、「比較級」とは大きく異なる所もあります。
「最上級」と「比較級」の大きな違い
最上級は、
比較級と異なり「than(~より)」を使いません。
なぜなら、
比べた対象の中での一番いいもの=最上のものだからで、
さらに上があるような可能性を残す「than」を使うのはおかしいからです。
ただ、
「最上」でも、なんの「最上」なのか?
ということは明らかにしなければいけませんよね?
だから最上級の場合は、
比較対象を明示する「than」ではなく、
比較範囲を明示する言葉を入れる必要があります。
具体例がこちら(ネタバレあります)。
童磨
You really are fast!
いやあ君 本当に速いね!
Maybe the fastest Hashira I've met so far!
今まで会った柱の中で一番かも
※met=meet(会う)の過去分詞、so far=これまで
細かい文法の話は一旦置いておきますが、
「今まで会った(I've met so far)」という範囲の中で、
最速(の柱)だと言いたいワケですよね?
この「範囲」を指定しないと、
「世界で一番速い」と、とれてしまうわけです。
童磨は、そんなことは言ってないですよね?(無惨の方が速いだろうし)
英語は日本語のように「あいまい」にすることを嫌う言語なので、
「一番」であれば、「どこの?」ということを明示するのが基本です。
「the+最上級」の表現
では、
具体的にどうやって「最上級」にしていくか、というお話をしていきましょう。
最上級の特徴的な書き方に、
「the」をつけるというルールがあります。
そもそも、
「一番」ということは、(同率1位という可能性はあっても)順位は特定されていますよね?
そのため、
基本、「最上級」には、特定する定冠詞「the」をつけるわけです。
最上級「the+○○-est」
それでは、肝心の「最上級」をどうするかですね。
「比較級」の時、短い単語は
形容詞や副詞の語尾に「-er」をつけていましたが、
最上級の場合はそれを「-est」にします。
しかも、
「-er」になるものは必ず「-est」になるので、
おぼえるのは超カンタンです。
「-est」になる形容詞・副詞の例
【形容詞の例】
cold(寒い)⇒coldest
big(大きい)⇒biggest
tall(高い)⇒tallest
easy(簡単)⇒easiest
hard(固い)⇒hardest
【副詞の例】
fast(速く)⇒fastest
soon(すぐに)⇒soonest
hard(熱心に)⇒hardest
実際の使用例を見てみましょう。
(前のページからセリフが続いているので画像はisから始まってます)
嘴平伊之助
Without a doubt, that guy ... is the strongest member of the Demon Slayer Corps.
間違いねぇアイツ 鬼殺隊最強だ
※without a doubt=間違いない、member of~=~の一員、the Demon Slayer Corps=鬼殺隊
このように、
「strong=強い」という形容詞の最上級には、
「the strongest=最も強い=最強」
という表現を使っていましたね。
さらにその後に、
「member of the Demon Slayer Corps(鬼殺隊のメンバーの中で)」
という比較範囲を明示していましたね。
(これがないと、鬼舞辻の方が強いじゃん!ってなるので)
これは次の「most」を使った表現でも同じことが言えます。
最上級「the most+○○」
比較級で「more+形容詞・副詞」という表現がありましたが、
最上級も同じで、単語が長い場合は、
「-est」にせず、前に「most」をつけます。
「most」になる形容詞・副詞の例
【形容詞の例】
important(重要)⇒most important
beautiful(美しい)⇒most beautiful
difficult(難しい)⇒most difficult
popular(人気の)⇒most popular
【副詞の例】
carefully(注意深く)⇒most carefully
easily(簡単な)⇒most easily
使う時はもちろん、「the」をつけて、
「the most ○○」
というように使います。
鉄地河原鉄珍
I'm the town's smallest and most esteemed person.
里で一番小さくって一番えらいのワシ
※town's=里の、esteemed=[形]尊敬されている
こちらは間に「town's(里の)」が入っているので
ちょっと複雑に見えますが、
「-est」を使った最上級
「the smallest(一番小さい)」と、
「most」を使った最上級
「the most esteemed(一番えらい)」の
二つを同時に表現している例ですね。
「town's(里の)」と言ってるので、後ろに比較範囲がありませんが、
I'm the smallest and most esteemed person in the town.
という風にしても大丈夫です。
「more」「most」がつけられない単語
ちなみに、
先ほど出てきた形容詞「esteemed」は、
動詞「esteem(尊敬される)」の過去分詞です。
英単語
[動詞]尊敬される、尊重される
過去分詞(-ed)や現在分詞(~ing)は、
動詞を「形容詞」のようにしたものなので、
この単語にさらに、「-er」とか「-est」をつけて、
「esteemeder」とか
「esteemedest」とか
にすることはできないんですね。
なので、
「esteemed」は、「more」や「most」をつけるしかないわけです。
ちなみに同じ理由で「more」「most」になるもので有名なのは、
「interesting(面白い)」
「interested(興味がある)」
ですね。
これも、動詞「interest」の分詞から形容詞化したものなので、
これ以上語尾が変化することはできないため
前に「more」や「most」をつけます。
他にも、
[動詞]use ⇒[形容詞]useful
[動詞]care⇒[形容詞]careful
など、動詞の語尾に接尾辞をつけて形容詞化されたものも、
同じ理由で「more」「most」になります。
その他「more」「most」になる単語
それ以外で「more」や「most」がつく単語は、
基本的に「音節」が3つ以上のものです。
「音節」とは音の区切りで、
ネイティブはこの音節を意識して発音しており、
ちゃんとした辞書なら、たとえば、
「beautiful」
であれば、
「beau・ti・ful」
のように音節を分けて書いてあります。
(なので、辞書で調べた際に音節を意識しておくとよいです)
分け方は基本的に「母音(a、i、u、e、o)」のかたまりですが、
実際には発音記号で決まります。
(beautifulは「au」を一音として数える)
細かいルールはこちらのサイトにまとまっていますが、
「y」も一音として発音するので、
短い「easily」も、「eas・i・ly」と三音節になるので、
「more」や「most」をつけた比較級・最上級になるんですね。
フォニックスをやっていれば別ですが、
この「音節」の感覚は中々日本人にはなじみがなく、
発音するときの都合で決まっているので、「more」がつく単語をおぼえた方が早い、
ということになっています。
(テストじゃないなら、辞書を引いた方が早いです。比較級は何か書いてありますから)
「the」のない最上級?
ここからは高校レベルの話になりますが、
ここで、
比較級にはない「the」がなぜ、最上級に付くのか?
という話と、
「the」がつかない最上級のお話をしていきますね。
最上級に「the」がつく理由
そもそもなぜ、
「形容詞」の最上級の前に「the」を置くのか?
理由は実に単純です。
定冠詞「the」は、
「the book」のように、ある特定のもの(名詞)を指す冠詞ですね。
そして、
普通、形容詞の後ろに名詞が来る場合、
冠詞⇒形容詞⇒名詞
の順で並ぶから、
その流れで「the」が形容詞の前に置かれるんです。
(なので名詞を修飾しない副詞の最上級はtheがつきません)
先ほど取り上げた例文を使って、その背景を見てみましょう。
嘴平伊之助
Without a doubt, that guy ... is the strongest member of the Demon Slayer Corps.
間違いねぇアイツ 鬼殺隊最強だ
「the strongest」の後に何がありますか?
「member」ですね。
「member」の品詞はなんですか?
「名詞」ですね。
しかも数えられる名詞、可算名詞です。
ですから「members」となっていない以上、本来は、
a member of the Demon Slayer Corps
(鬼殺隊の中の隊士の一人)
とならなければいけません。これは名詞のルールです。
その中の、
悲鳴嶼行冥という特定の一人を指すから「the」がつくんです。
つまり、
the member of the Demon Slayer Corps
(鬼殺隊の中の特定の隊士の一人)
に、
形容詞(の最上級)「strongest」がついて、
the strongest member of the Demon Slayers Corps
(鬼殺隊の中での最強の隊士)
と表しているから、名詞のルール的に「the」が必要なだけなんですね。
「名詞」がなくても「the」がつくとき
つまり、
「最上級」は自身は純粋な形容詞・副詞として機能し、
最上級の「the」は、形容詞・副詞の後に来る「名詞」にかかっている、というわけです。
あまりこういう話を聴いたことがない、という人も多いでしょう(私もそうです)。
なぜかというと、最上級の例文がいつも、
Kibutsuji Muzan is the strongest demon.(鬼舞辻無残は最も強い鬼だ)
のように「順位」を表しているからです。
「順位」は特定されるので自然と「the」がつきますし、
なんなら2位でも「the Second」と「the」がつくので、
本来は「最上級=the」じゃなくて、順位の事情、ということですね。
しかし、
後ろに名詞が来ない時でも「the」がつくときがあります。
Kibutsuji Muzan is the strongest.(鬼舞辻無残は最も強い)
なんてのがその例です。
ですがそれも、
本来は「the strongest」の後ろにあるべき「demon」が省略されているだけで、
やはり「the」は名詞にかかる冠詞ということが言えます。
「the」と「最上級」の間に入れるもの
このように、
「the=最上級」ではなく、
名詞に係る「the」ということだけおぼえておくと、
先ほどの鉄珍様のセリフ
「the town's smallest(里で一番小さい)」
ような、
「the」と「最上級」の前に何かが付いた表現も理解できるわけです。
普通の形容詞の使い方と同じだからですね。
こちらもそうです。
こちらは上弦の陸・堕姫が、分身の帯(なので「I」なんですねぇ…)に命じたシーンで、
I'll save the ten most beautiful ones!
となって、
「the」と「most beautiful]の間に「ten(10)」が入っていますが、
「極めて美しい10人の者」という意味です(one=者)。
これも、
「特定の美しい10人=the ten beautiful」がまずあり、
それが最上級だから、
形容詞「beautiful」に副詞「most」をつけて最上級にしたんですね。
「the」のない最上級
以上のように、
「the」は名詞にかかる定冠詞ですから、
後ろに特定する名詞が来ない使い方の場合は、「the」が来ません。
(名詞が省略されている場合を除く)
こちらはそんな例です。
悲鳴嶼行冥
What's most important is the body's base... the legs and hips.
最も重要なのは体の中心…足腰である
※base=根幹、the legs and hips=足腰
主格の関係代名詞whatを使って、
what=~のこと
is=~である
most important=最も重要な
で、「最も重要なのは」という名詞節をつくって、
後に続く「is the body~」は名詞節を主語とした文になっていますね。
ちなみに、
「What's important(大切なのは)」は、
以前、禰豆子の名セリフとして紹介した、定型表現です。
悲鳴嶼さんの
「What's most important...」は、
この「important」という形容詞に、
「most」という副詞をつけて最上級の「形容詞」にしたかっただけなんですね。
だから、
形容詞の後ろに名詞が来ていないし、
名詞が来ていないので「the」がいらない、ということです。
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参考「大切なのは”今”なんだよ」を英語で?【★★★★】~主格の関係代名詞
おはようございます! 今日も引き続き、『鬼滅の刃』原作23巻の発売を記念した、 全国紙5紙の新聞全面広告がネット公開されているのに勝手にタイアップした企画です。 (第1弾)(第2弾)(第 ...
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「the」がいる時といらない時
以上のように、時と場合によって、
「the」がつく最上級と、
「the」のつかない最上級が生まれる、
というわけですね。
そしてそれは基本的に、
通常で「the」を必要とするときと同じ感覚だということです。
なので、下記のように「the」じゃなくて「a」の時もあります。
玉壺(ぎょっこ)
I've stopped your breathing, which is a Demon Slayer's greatest weapon.
※breathing=呼吸
which以降は「your breathing」の説明で、
「greatest(最大の)」という最上級を使っていますが、
形容詞として修飾する後ろの名詞「weapon」の冠詞は「the」じゃなく「a」になっています。
かたや、とても悪い顔をした無一郎のセリフ
時透無一郎
Even the strongest attacks are pointless if they don't hit.
どんな凄い攻撃も当たらなかったら意味ないでしょ
even=[副]~でも、pointless=[形]無意味な
こちらは「the」になっています。
それぞれ、武器「weapon」や攻撃「attack」と同じようなものを修飾しているのに、
なんで「a」と「the」になるのか?
それは、
前の玉壺が、
「全集中の呼吸」についての一般論を言っているので「a」、
後の無一郎は、
今受けた(そしてかわした)攻撃という特定のものを指すので「the」、
になっているんですね。
とはいえ、
ここまでこだわるのはネイティブレベルの英語と言えるかもしれませんので、
最上級だけど「the」にならない時もある、くらいに考えていた方がいいかもしれませんね。
まとめ
「最上級」は、
「比較級」と同じ系統の文法表現ですので、
基本的には比較級と同じ特徴があります。
しかし、
「最上」を示すという性格上、
比較級にはない「the」の概念と、
比較対象となる「範囲」を使って、
「何の最上か?」
ということをハッキリしなければいけない時もある、
という特徴もありますので、その辺しっかり抑えておきましょう!
形容詞・副詞の「最上級」
【最上級の作り方】
短い単語
⇒語尾に「-est」をつける
〔例文〕That guy is the strongest member of the Demon Slayer Corps.(アイツ 鬼殺隊最強だ)
長い単語*
⇒単語の前に「most」を置く
*音節が3音節以上の場合
〔例文〕What's most important is the body's base... the legs and hips.(最も重要なのは体の中心…足腰である)
【最上級の文法】
比較範囲を言う場合
⇒最上級の後ろで、比較範囲を言う
〔例文〕Maybe the fastest Hashira (that) I've met so far!(今まで会った柱の中で一番速いかも)
形容詞・副詞として使う場合
⇒最上級に変えて、通常と同じように使う
〔例文〕Even the strongest attacks are pointless if they don't hit.(どんな凄い攻撃も当たらなかったら意味ないでしょ)
「the」をつけないとき
⇒後ろに名詞が必要とされないとき
〔例文〕What's most important is the body's base the legs and hips.(最も重要なのは体の中心、足腰である)