おはようございます。
今回から、学校で習う英文法で、わかりにくいものを、マンガ『鬼滅の刃』英語版を使ってわかりやすく解説していきます。
第1回は、中学校だと「書き換え」問題がある関係で「同じような意味」とされがちな、「~するつもりだ」を表す、「will」と「be going to」の違いです。
「will」は助動詞、「be going」は進行形・・・どう考えても同じ表現じゃないのに、なぜ同じような意味になるのか?
本当に同じような意味なのか、わかりやすく解説・・・の前に、「よく言われる」結論からいきます。
ポイント
「will」は今決めた意志・未来を表す
「be going to」はあらかじめ決まっている未来を表す
・・・確かに正しくてわかりやすい違いです。
わかりやすいんですけど、いざ「どっち?」という時に、どっちがどっちかわからなくなりませんか?
いや、例文とか載ってるんですよ?
でも、普通の例文だと、記憶に残らないんですよね。
そもそもね、人間、文字って記憶に残りにくいんですよ。
だから、絵とか映像などの視覚に訴えた方がいいんです。
なんなら、その言葉が選ばれた「背景」がわかるシーンというのが一番いい。
そこで、
人気マンガ『鬼滅の刃』英語版のワンシーンから、
二度と忘れない「will」と「be going to」の違いをご紹介します。
目次
マンガのワンシーンで違いがわかる!
英文法の解説は、英語が好きな人が書いているので、「わかりやすい」と書いてあっても、正直、ハードルが高い。
そこへいくとマンガは簡単です。
百聞は一見にしかず。
ということで、マンガのワンシーンを「引用」してみます。
こちらのシーンは、主人公炭治郎たちが、鬼舞辻が刺客として送りこんだ鬼との死闘を終えた後の一コマです。
今後、戦いながら鬼になってしまった妹(禰豆子)を連れ歩くのは危険じゃないか? 私たちが面倒みましょうか? と提案してくれた心優しき珠世さん(2コマ目奥の着物の女性)の提案に対して、主人公の炭治郎が感謝しつつも、妹との旅を続けると宣言した、兄妹愛を感じるシーンです。
このシーンの英語版で、炭治郎の左のコマのセリフを見てもらいましょう。
「We'll」は「We will」の略、「aren't」は当然「are not」の略です。
つまりこのシーンは、「will」と「be going to」(の否定形)を同時に使っているシーンなんですね。
意外とこういう見本がないので、
私はこのシーンを見た時にぶったまげましたが、超わかりやすい比較なんです。
なぜかって、「使い分け」がキチンとされているからです!
(肯定文と否定文という違いじゃありませんよ!?)
「will」と「be going to」を使い分けた理由
この、炭治郎の最後のセリフは、以下の二つに分けられます。
①俺たちは一緒に行きます
〔訳〕We'll continue to travel together.
②離ればなれにはなりません
〔訳〕We aren't going to split up.
※continue=[動]続ける、travel=[動](旅に)行く、together=[副]一緒に、split up=[動]別れる
どちらも、中学生レベルの文法なので、単語の意味がわかれば、この文の訳を書くのはそう難しくありません。
①We'll continue to travel together.
〔直訳〕私たちは一緒に行くことを続けるつもりです
〔原作〕俺たちは一緒に行きます
②We aren't going to split up.
〔直訳〕私たちは別れるつもりはありません
〔原作〕離ればなれにはなりません
①は、「continue」と「travel」という二つ動詞がありますが、後ろは「to travel」となっているので「to不定詞」ですね(「~すること」になる名詞的用法)。
②は、「be going to」を使った文の否定形ですね。
いずれも未来の話をしていますし、
直訳だけで比較してしまうと、いったい何がちがうのかわかりません。
ですが、炭治郎がこういうセリフを放った「背景」を考えると、
「will」と「be going to」で使い分けた理由がハッキリと見えてくるのです。
炭治郎の「will」の裏にあったもの
まず、①の「俺たちは一緒に行きます」ですが、
これは、珠世さんが「禰豆子さんをお預かりましょうか」と言った提案に対しての返事です。
実は、炭治郎は珠世さんのこの提案を受けて、一回悩んだんですよね。
だけど、禰豆子が、炭治郎の手を握って「離れたくない」と無言でアピールしたんです。
禰豆子は、鬼になった上、口かせをしていて喋られないので、「手を握る」ということで意思表示をする、鬼滅の刃の「家族愛」というテーマが光る、必見のシーンです。
炭治郎は、この、禰豆子の行動を受けて気持ちが変化し、
「俺たちは一緒に行きます(We'll continue to travel together.)」
と決意を告げたんですね。
決まりかねていた未来のことを、今、決めたんですね。
そういった時に使うのがまさに、
「今決めた未来・意志」を表す「will」なんです。
ちなみに、「天気」「出来事」のように、意志のないものにも「will」を使いますが、この場合は、「決まっていない未来を表すwill」を表します。
先ほどと本質的には同じですね。
この辺は、「will」のことを詳しく掘り下げたときにご紹介します。
炭治郎の「be going to」の裏にあったもの
もうひとつ、「be going to」(の否定形)を使った②の方はどうでしょう?
「離ればなれにはなりません」と珠世さんに宣言しているので、「今決めた未来」にとれなくもないですよね?
でも、違うんです。
このすぐ後のコマに、この言葉の続きが記載されているので、それを見てもらうとよくわかります。
「離ればなれにはなりません もう二度と」と、
第1話で鬼に惨殺された禰豆子以外の家族のことを頭に浮かべながら、あの時のように「自分が家族と離れた時に永遠の別れとなってしまった」ということがないようにしたい、という炭治郎の「想い」が語られています。
炭治郎は家族が鬼に殺されてしまった時からずっと、他の家族のようなことはしたくない、つまり、
「禰豆子と二度と離れない」と心に決めたわけです。
そしてその気持ちは、
今の今までずっと続いているんですね。
つまり、炭治郎が
「離ればなれにはなりません(We aren't going to split up.)」
と言うのは、これまでもこれからも、つまり、過去から現在を経由して未来も「別れないこと」が続いていくよ、という意味なのです。
だから、
「あらかじめ決まっている未来」を表す「be going to」を使っているのです。
言い方を変えれば「予定・計画されていた」時に使うということですね。
実はあの超名作マンガのセリフにも!
他のマンガにはなりますが、
『ワンピース』の主人公・ルフィのあのセリフも実はそうです。
ルフィ
I'm going to become ... the King of the Pirates!!!!
(海賊王に 俺はなる!!!!)
ルフィ的にはあらかじめ決まっている「海賊王になる計画」に向かってまっしぐらであって、瞬間的に「やろっかな」と思ったわけじゃないですよね。
だから、
炭治郎と禰豆子の「家族の絆」も、
ルフィの「海賊王になるという夢」も、
「be going to」を使っているんですね。
そういう意味でも、
今決めた、やっぱり一緒に行く、という意味の「will」とは違いますよね。
「will」は、
「予定・計画されていなかった」時に使うのです。
だから、瞬間的に思いついたことで「I'll」という表現を使うことが結構あります。
こちらは今、映画上映中の無限列車編の中で、善逸が初めて「禰豆子ちゃんは俺が守る(I will protect you, Nezuko.)」と言ったシーンですね。
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参考「禰豆子ちゃんは俺が守る」を英語で?【難易度★★】
鬼滅の刃公式twitterで、劇場版のカウントダウンが始まっていますね。 今日は公開まで4日という日ですが、善逸が登場していました。 『劇場版「#鬼滅の刃」無限列車編』 \公開まであと4日/ 「禰󠄀豆 ...
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いかがでしょうか?
こうやって、同じ人物が「will」と「be going to」を使い分けているのを見ても、その背景を読み取れば、
それぞれの違いがあり、
正しい使い分けができる、
ということがわかっていただけたかと思います。
では、それを理解した上で、それがなぜ起こるのか、文法的な解説をしていきましょう。
使い方をおぼえてから理屈を知ると、一生忘れませんからね!!
文法的なお話!
「will」と「be going to」は本来はまったくの別物
そもそも「will」は助動詞です。
そして「be going to」は・・・
「進行形+不定詞」なんですね。
だから、普通に考えると、「will=be going to」という方がヘンなんです。
ただ、両者とも非常に良く使う上、結果的に意味が同じになる場合も多いので、「will≒be going to」というように教えてしまうのです。
実際、関係を式で表すなら、
「be going to≧will」という感じで使えます。
英会話では、困ったら「be going to」で全部OKと教える人もいます。
なぜなら、
過去形は「was/were going to」を使うからです。
そんなわけで「will」と「be going to」の違いは、
ポイント
今決めたこと⇒will
あらかじめ決まっていたこと⇒be going to
過去形を使うとき⇒was/were going to
という所を覚えて使い分けられればOKという話になることもよくあります。
「will」と「be going to」の意味の違いを生む物
ですが、せっかくなので、「be going to」が「現在進行形+to不定詞」であるならば、それをキチンと理解することで、瞬間的な「暗記」に頼らない記憶もできるはずです。
そもそも、「進行形」自体、「~ing」は状態を表している形容詞、と理解しておくことが大事です。
「be動詞+形容詞」で「~な状態」ですよね?
それがとくに「go」の場合は、
日本語での「行く、進行する」と同じように、「going=進行している状態」を表します。
何が?
どんなことでもです。
時間的経過も「進行している状態」ですよね。
それが、「一緒にいること」でも「離れないこと」でも「旅をすること」でも、
時間的概念で「進行している」ものであればなんでもいいのです。
そして、その対象が「~こと」となっているので、
これを「to 不定詞(名詞的用法)」で表現できると理解しておけばいいのです。
だから「be going to」の後は必ず動詞の原形が来ます。
かたや「will」はというと、あくまでも「今」行うこと(動詞)に意志を追加する「助動詞」なので、
当然のことながら今から先の未来の「行動」を指します。
それがつまり決意を表すわけです。
だからこそ、冒頭のような、
ポイント
「will」は今決めた意志・未来、
「be going to」はあらかじめめ決まっている未来を表します。
が成り立つ、ということですね。
本日のまとめ
結果として「will」と「be going to」は未来を表す表現ではありますが、
「will」は炭治郎が決意したこと、
「be going to」は炭治郎(とルフィ)がずっと決め続けていたこと
を表す、という違いがあったってことですね。