子どもって、物騒な言葉が大好きですよね。
「殺す」とか「死ね」とか。
学校ではそれらの言葉を「言ってはいけない」と指導するので、
当然、
英語の表現も習うことはありません。
しかし、
こういった荒々しい言葉こそ、言語の本質が隠れていたりするものです。
そんなわけで、そういった「学校で教えてくれない」名セリフが今日のテーマです。
今日のお題は、『鬼滅の刃』17巻のこちらのシーンから。
(※アニメ派の人はネタバレになるので原作をチェック)
ネタバレになるので詳細は伏せますが、衝撃の展開を見せる『鬼滅の刃17巻』のワンシーンです。
いつも丁寧で(時々サイコな)胡蝶さんの、感情をむき出しにしたセリフですね。
これを『鬼滅の刃』英語翻訳版のネイティブ英語でどう訳された?という問題です。
問題
地獄に墜ちろ
ヒント:①for ②in ③down ④to
答え
正解
地獄に墜ちろ
④の「to」が正解でした!
解説
「Go to hell」は、
「地獄へ墜ちろ」の訳としてとてもよく知られています。
ただ、
あまりにも有名すぎる上、学校でも教えてくれない言葉なので、
文法的にどうなっているかなど、あまり考えることもないのではないでしょうか?
主語+動詞
動詞「Go」から文が始まっていることからもわかるように、
この文は動詞の原形から始まる「命令文」です。
命令文は目の前のいる人(=you)に言う文なので、
主語は省略されていますが「You」です。
つまり、
You=お前は(主語)
go=行け(動詞)
to hell=地獄に
ということを言っているワケですね。
前置詞「to」
今回の文で使われていた「to」は、
一般的に「~へ」「~に」と訳される
名詞の前に置かれる品詞「前置詞」で、
上記の「~」の部分には場所を表す名詞が入ります。
先ほどの例で行けば、
Go:動詞
to:前置詞
hell:(場所を表す)名詞
ですね。
「to hell」で「地獄へ」とか「地獄に」と訳せるので、
命令文「Go(行け)」を使って、
Go to hell.=地獄に行け、くたばれ⇒地獄に墜ちろ
となるのです。
ちなみにこの「hell」の前に、
冠詞「a」や「the」はいりません。
なぜなら、
「地獄」は地獄しかないという考え方だからですね。
ある意味固有名詞なんです(なので、場合によってHellと書くこともあります)。
ちなみに、先ほどご紹介したように、
「Go to」の後は「hell」「bed」「school」などの場所を表す名詞を入れます。
そうなると最近話題の、
「Go to travel」や「Go to eat」は、
場所を表す名詞じゃなく動詞が来てしまっているので、文法的には「Go+to不定詞」になっちゃいます。
すると意味が、
「旅行に行こう」ではなく、
「旅行するために行こう」になっちゃいます。
ちょっとヘンですね。
英語的には「Go on a trip」とか「Go traveling」がふさわしい表現といわれています。
なので、
「Go to travel」も「Go to eat」も、
社会のテストなら「○」ですが、
英語のテストでは「×」です。
ご注意を。
「Go "down" hell」じゃない理由
なお、
「地獄に墜ちろ(落ちろ)」なのだから
「落ちる」という意味のある「Fall」や「Drop」を使わないのかといったら、使いません。
(Drop dead.は言うらしい)
「to」じゃなくて「down(下の方に)」になって、
「Go down hell.」
という言い方もしません。
あくまでも、
「Go to hell.=地獄に墜ちろ」
なんです。
この言葉自体、
とにかく相手に地獄に行ってほしいくらいムカついたときに使う言葉ですね。
その言葉が、
日本語だと「地獄 に/へ 墜ちろ/落ちろ」
英語だと「Go to hell.」
になるわけですね。
地獄は「落ちる」所?「行く」所?
それにしても、
日本語では地獄は「落ちる所」ですが、
英語では地獄は「Go(行く)所」なんですね。
この違いについて具体的に書かれたものが見つからないので推測ですが、
英語の「go」が幅広い意味を持つというのもありますが、
この辺は、双方の「地獄」観の違いにあるようにも思います。
日本語の地獄は、
仏教の地獄がベースです。
地獄は八階層になっていて、どんどん落ちていくほどひどい地獄(奈落)になるという、「八大地獄」という概念がベースにあります。
(「地獄の底」「奈落の底」は、その最も深い層の地獄を指す)
だから、
「地獄へ行け(行く)」とは言わず、
「落ちろ(落ちる)」という言い方が生まれたのでしょう。
かたや、英語圏の地獄は、
キリスト教の地獄がベースです。
これも「地下」にあるので「落とされる」ことはあります。
でも、仏教のようにどんどん深くなるという概念ではなく、どちらかというと「違う次元」ですね。
だから、あくまでも推測ではありますが、
違う次元に「Go to(~へ行け)」となっていると考えると、日英の違いがスッキリするかなと思います。
「落ちろ」じゃなく「墜ちろ」な理由
なお、原作では
「地獄に落ちろ」ではなく
「地獄に墜ちろ」となっていましたね。
胡蝶さんは仇(かたき)のことをずっと憎しみ続けていたわけですね。
作者の吾峠先生は、
日本文化にかなり精通した方と思われるので、あえて「墜ちろ」という漢字を意識して書かれたと想定されます。
「墜ちろ(墜ちる)」という言葉は、
「墜落する」という言葉があるように、ヒューッと最後まで落ちて行くイメージです。
そのイメージで、
胡蝶さんの相当深い「怒り」や「憎しみ」の感情を表現するために、
「墜ちろ」という漢字のチョイスをしたのだと思います。
地獄の底の底まで行きやがれ、糞野郎ということです。
これは原作でしか味わえないもの、と言えるかもしれませんね。
今日のまとめ
シンプルな言葉にも、英語のエッセンスがたくさんつめ込まれているのがわかりましたか?
単純に英単語の訳を丸暗記するだけだと、おかしな英文を作ることになってしまうので、英語を全体的に理解する、つまり「英語の呼吸」を身につけることが大事ということですね。
今日の言葉
Go to hell!
地獄に墜ちろ
ちなみに、この後の「とっととくたばれ糞野郎」はこちら!
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