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の記事の中で「未解決」だった「謎訳」を追う回です。
(あまり誰かの役に立たない可能性の高い記事です)
該当のシーンはコチラ、
煉獄杏寿郎
Oh! So that's it, huh!
うむ!そういうことか!
Well, I dunno!
だが知らん!
And this is the first time I've heard of the Hinokami Kagura!
「ヒノカミ神楽」という言葉も初耳だ!
※the first time=初めて
But it's great that your father was able to apply the kagura to fighting!
君の父がやっていた神楽が戦いに応用できたのは実にめでたいが
※apply=応用する
And that's enough of that topic!!
この話はこれでお終いだな!!
※enough of=もうたくさん、topic=話題・トピック
の
「君の父がやっていた神楽が戦いに応用できたのは実にめでたいが」
の部分が、なぜ
「But it's great that your father was able to apply the kagura to fighting!」
(君の父が神楽を戦いに応用できたのは素晴らしいが)
と、「your father」となっていたのか?
というのがわからないままだったので、その後追い記事です。
(ちくわまるさんにアドバイスいただきました!ありがとうございます!)
前から大事なことをいう英語
英語は、基本的に、結論を先に言う言語です。
具体的には、「○○する」という動詞が主語のすぐ後に来て、
動詞が最後に来る日本語と根本的に文章が違います。
ですから、
日本語的に考えるのではなく、
英語の感覚(英語の呼吸)で、英語らしく先頭から理解していくと、
なんでこんな不思議な英訳をされたのかが見えてくるものです。
文頭のBut
英語でわかりにくい文章は、
拾壱ノ型「スラッシュリーディング」でスパスパ斬っていき、
前から訳していくのが基本でした。
But / it's great / that / your father was able / to apply the Kagura / to fighting!
まずは文頭の「But」です。
日本語の感覚だと「but=しかし、だが」という訳になるので、
いったん文を切って、「But」から始めるのも別に問題はないと感じますが、
「正しい英語文法」では「but」を文頭には置かないそうです。
ただ、実際のところ、
会話やニュース記事、物語文など、お堅い文以外は、
「でも」を強調したいときなどに文頭に置いてもOKのようです。
今回は、
煉獄杏寿郎
Well, I dunno!
だが知らん!
And this is the first time I've heard of the Hinokami Kagura!
「ヒノカミ神楽」という言葉も初耳だ!
と言ったことに対しての「but」として持ってきているわけですね。
it ... that構文
続く「it is great that...」は、
it is 形容詞 that 主語+動詞
=主語+動詞ということは形容詞だ
という意味で、
いわゆる「形式主語it」と「that節」を使う文で、
文法書では「主語が大きくなるから、仮主語itを置く」みたいな説明をされます。
でも、
あくまでもそれは「文章を理解するため」の方法であって、
実際に話す時に「主語が大きくなるから後で言おう」などと思うのは不便もいいところです。
じゃぁ、
なんのためにこの表現が存在するかというと、
例えば今回のケースであれば、
「great」という「感想」をまず言いたいわけですね。
英語は文を作るのに主語と(述語)動詞が必要だから「it is」と言ってるだけで、
言いたいのはその後の形容詞なんです。
だから、会話では「it's」と省略されることが多いわけです。
それを踏まえると、
煉獄さんのセリフの英訳で表現したかったことは
But it's great!
=しかし素晴らしいことだ
ということなんですね。
that your father was able
その後に続く「that」は、
主語+(述語)動詞の節の入った「that節」を作る接続詞で、
「~ということ」と節の内容を説明する訳をつけられることもあります。
節の中の主語「your father」に続くのが、
「was able to」ですね。
よく「~できる」と訳される「be able to」の過去形です。
ちなみに似た意味にとらえられがちな「could」は
過去にだけできたことを指し、
「was able to」は、
「able=する能力がある」という形容詞と、
「to不定詞=~するための」を使った表現で、
「~するための能力があった」という意味ですから、
過去にいた人(この場合は炭治郎の父・炭十郎)が、
常日頃からできたことを指すので、
「was able (to)」
が使われていたんですね。
つまり、
But it's great that your father was able
=しかし素晴らしいことだ、君の父は~する能力があったんだな
と理解できるわけです。
to apply the Kagura to fighting
最初の「to」は、
「be able to」の「to」ですが、
不定詞の「to」でもありますね。
そして、「apply」という動詞には、
英単語
[動詞]申し込む、当てはまる、適用する、応用する、専念する
という意味があり、
後ろに前置詞「to~=~に/へ」がつくことが多い単語です。
特に、
apply A to B
=AをBに応用する
という使い方もできますので、
今回は
the Kagura to fighting
=神楽を戦いに応用する
という訳し方ができるわけですね。
「to」は➡というイメージで使えますので、
the Kagura➡fighting
=神楽➡戦うこと
と理解してもいいでしょう。
ちなみに、
「fighting」は前が「to」なので動名詞です。
(toの後ろは不定詞以外は名詞が来るから)
以上のことから
But it's great that your father was able to the Kagura to fighting!
=しかし素晴らしいことだ、君の父は神楽を戦いに応用する能力があったんだな
と訳せるわけです。
なぜ原作と訳が違うのか?
ここまで引っ張っといてなんですが、
ぜんぜん解決していない感じがしますよね?
原作では、
煉獄杏寿郎
君の父がやっていた神楽が戦いに応用できたのは実にめでたいが
となっていて、
炭治郎が「応用できた」という話しかしておらず、
「炭十郎に応用する能力があった」などとは言っていません。
ではなぜ、英語版では、
炭十郎に「応用する能力があった」ことにフォーカスした言い方をしたのか?
①客観的事実で結論を言いたかった説
そもそも、
「it is 形容詞 that節」
という文法表現は、
具体的に考えている内容が後から出てくる表現です。
こういった表現は、
感情が先⇒考えが後
となるので、文自体が「客観的」になるんですね。
It is nice to play tennis together.
=いいですね、一緒にテニスをすることは
というように、
客観的に思ったことを、「that節」や「to不定詞」で述べるわけです。
翻訳者は、
このシチュエーションでは、
煉獄さんは炭治郎の質問を「知らん」「初耳だ」と片づけて、
「But」を持ってきて「めでたい」という感情を言う状況から、
「君の父は神楽を戦いに応用できたってことか!」
っていう煉獄さんの中で出した「客観的な結論」を言ったから、
原作とはなにか雰囲気の違う訳になった、という理由も考えられます。
また、この後のセリフが、
煉獄杏寿郎
And that's enough of that topic!!
この話はこれでお終いだな!!
enough of=もうたくさんだ
を使って、「話にケリはついた」と結論づけているわけです。
つまり、
煉獄さんの中では「考えるのを放棄」したのではなく、
「考えた上で結論づけた」という終わり方にしたくて、
このような訳し方をした、ということも考えられるわけです。
いかにも「結論をハッキリさせたい英語」らしい考え方です。
②「神楽」の問題
もう一つ考えられるのは、「神楽」です。
我々日本人は「神楽」というものが、
「神」という文字が入っているため
神に捧げる舞いの一種だということはわかりますね。
だから、
「君の父がやっていた神楽が戦いに応用できたのは実にめでたい」
と言われてもすんなり理解できます。
通常は戦いに応用できないことを知っているからです。
しかし、
「神楽」が具体的にどういうものか知らない人からしたらどうでしょう?
神楽(the Kagura)が戦いに応用(apply)と言われても、
スゴさが伝わりづらい感じがしますね。
なので、
あえて遠回しに
「剣士でも何でもない君の父が戦いに応用できる神楽ができた」⇒「great」
という形に「意訳」したのではないか?ということも考えられます。
③単なる誤訳
他の理由としては、
「誤訳」ということもあり得ます。
「獣の呼吸」が重複していたり、たまにありますからね。
ただ今回のは、
訳を間違えたというよりは、
原作を読み間違えた、と言うことでしょうが・・・。
「君の父が(やっていた)神楽が戦いに応用できた」
と、「やっていた」を省略すると、確かにこの訳に近くなりますからねぇ・・・。
まぁ、
「君の父が神楽が」はヘンなのでそんなことはないでしょうが・・・
いやはや。
本日のまとめ
結果真実はわからないもの、後々を見てみると、炭十郎が呼吸を使って熊を倒すシーンが出てきますので、煉獄さんの「結論づけた」父が神楽を戦いに応用できたを結論づけたのも間違いではない・・・。
ひょっとしてジャンプ本誌で読んでいた訳者が、その感覚で訳しちゃったとか・・・まさかそんなネタバレ的なね。