おはようございます。
『鬼滅の刃』のアニメサイトではほぼ触れられていないのに、
ジャンプの特設サイトには出ている、全国紙5紙の新聞全面広告。
(コミックスの告知だからだと思う)
せっかくなのでここでも、
新聞広告に使われたセリフをピックアップして、英語でどう表現しているのかを、『鬼滅の刃』英語版から見ていきましょう。
まずは、5紙に共通して掲載された、お館様こと産屋敷耀哉(うぶやしきかがや)のあの言葉から。
お館様の病状が思わしくないこと(というか見た目)に配慮したためか、全面広告ではベタ塗りでしたが、
こんな状態になっても涼やかに、信念を貫けるお館様のこのセリフが、『鬼滅の刃』の裏テーマといっても過言ではありません。
そこで今回は
この、「永遠というのは人の想いだ 人の想いこそが永遠であり 不滅なんだよ」を
『鬼滅の刃』英語翻訳版のネイティブ英語でどう訳された?という問題です。
問題
永遠というのは人の想いだ
※eternity=[名詞]永遠、永久
Only( )( s)last forever and are undying.
人の想いこそが永遠であり 不滅なんだよ
※last=[動詞]続く、生き延びる
※forever=[副詞]永遠に
※undying=[形容詞]不滅の
選択肢
①human spirit
②human feeling
③human thought
④human desire
「想い」の訳がどれか、という問題です。
ヒントは「エッ」って感じのです。
目次
答え
正解
永遠というのは人の想いだ
Only human feelings last forever and are undying.
人の想いこそが永遠であり 不滅なんだよ
②の「human feeling」が正解でした!
今回はかなり長くなりますので、全集中・英語の呼吸・常中でついてきてください!!
解説①~「想い」について
今回、
選択肢として4つの英単語をあげましたが、実はこれ、いずれも「想い」と訳すことができる単語です。
しかし、
なぜそれが、「feeling」になったのか?
「フィーリング=想い?」って感じですよね??
「想い」とは何か?
そもそもまず、
日本語の「想い」という言葉を追っていく必要があります。
実は、「想い」は、
今の教科書的な考えだと、
「思い」と同じとされます(辞書にもそう載っている)。
しかし、
マンガなどでは「思い」と「想い」は明確に分けて書かれます。
理由は明確です。
「思」を使う熟語が、
「思考」「思想」「思案」など、
あきらかに「頭で考える」イメージがあるからですね。
かたや「想」の方はというと、
「想像」「感想」「理想」などで、
頭だけではなく「心」が絡むイメージがあるからですね。
実際、
「おもいやり」
という言葉を漢字にすると、
「思いやり」は、米軍への「思いやり予算」のように頭で考えたようなイメージですが、
「想いやり」には、相手の気持ちを想像してあげる、イメージがあります。
ジャーナリスト系でもなければ、普通、作家は、「心」を含む「おもい」については、
「想い」という言葉を使います。
特にマンガであれば100%がそうだと思いますし、『鬼滅の刃』の作者、吾峠呼世晴先生も同じです。
「想い」を英語で?
さて、そんな「想い」のことをふり返ったところで、本題の英語に行きます。
選択肢は、それぞれ名詞で、
①spirit(語源は「呼吸」)
=魂、精神、心、霊、気持ち、思い
②feeling(feelの動名詞)
=感情、気持ち、感覚、意見、思い
③thought(thinkの過去分詞が名詞化)
=考え、思いつき、気持ち、思い、思考
④desire(語源は「渇望する」)
=欲望、要望、執念、思い
・・・というような意味があります。
語源や「他の意味」を見てみると、「思い」と「想い」のように、それぞれのイメージの違いが見えてくると思います。
たとえば①の「spirit」であれば、
日本語でも浸透している「スピリット」ですね。
「スピリチュアル」と語源が同じなので、「霊」という意味もあり、外的なニュアンスが帯びて、「人間の想い」には合わない気がしますね。
③の「thought」は、
「think」の過去分詞「thought」がそのまま名詞になったもので、
「考える」という意味合いが強いため、「想い」より「思い」のイメージですよね。
④の「desire」は、
名詞でも動詞でもありますが、いずれも「強く渇望する」という意味合いの強い「思い」になります。
これも「人間の想い」というよりは、永遠に生きられることを欲する、相対する鬼舞辻無惨の「想い」のように感じますね。
では、②の「feeling」は消去法なのでしょうか?
「feeling」とは?
「feeling」は、
日本語でもなじみのある「フィーリング」のことです。
「感じる」という意味の動詞「feel」に「~ing」をつけて名詞化した物(動名詞)です。
ですから、日本語的に考えると、
「feeling=感じること」
というニュアンスになります。
感じるのってどこでしょう?
手や肌ですか?
それもあります。
でも、日本人でも英語圏の人でも、「心」で感じることもあるんですもちろん。
たとえば、
I feel bad.
であれば、直訳すれば「私は悪く感じる」ですが、
「申し訳ない」という意味になります。
「bad」を心で感じているから、謝罪する気になるのです。
(余談ですが「bad」を頭で感じた人がする謝罪会見が失敗するのは当然です。)
これって、心の動きですよね。
むしろ、頭の「考え」をともなわない、心の動き。
たとえば、「アレは気持ち悪い」ってあるじゃないですか。
あれも、考えてもよくわからんけど、心が拒否しているということもあるわけです。
科学的に見たら脳の処理なのかもしれないけど、多くの人は、「心」が感じていると思うわけですね。
これって「想い」というのに似てませんか?
「feel」という単語は・・・
これは私の推測ですが、まだあります。
そもそも、
「feel」というのは、英語初学者でもわりと最初の方に習う単語ですね。
それだけ根源的で普遍的なものということです。
カンタンに言えば、だれでも使える言葉ということですね。
お館様である産屋敷耀哉が言っている「人の想い」というのは、
そんな難しい事を言っていますか?
「大切な人を守る」「強い人が弱い人を助ける」「仲間は助け合う」
そういった、
人間として、根源的で普遍的な、それこそ、
文字も読めなかった伊之助や、
電車も知らなかった炭治郎であっても、
大事にしなきゃということが「心でわかる」ことが、「人の想い」なんですね。
自分をこんな体にしたという逆恨みで人を殺したりする、頭でっかちの無惨とは対極にある、それこそ子どもでもわかる「想い」。
鬼滅にはこのテーマがあるからこそ、少年マンガとしてはかなりグロいシーンの多い作品であるにも関わらず、子どもから大人まで、心を動かされるわけです。
それを表す言葉が、「難しい」単語でいいのでしょうか?
そんな意図が、「feeling」というチョイスからも読み取れる気がするのです。
解説②~文の構造と意味
それではここからは、いつものように、
それぞれの文の構造と単語を見ながら、どう訳されたのかを見ていきますが、
文の構造としては難しくないのですが、いろんな要素があってちょっと複雑に感じる文章です。
二文に分かれていますので、一文ごとに解説していきます!
まだ戦いは続いてますよ、まだまだ、全集中・常中で!
Eternity is human feeling.
永遠というのは人の想いだ
「eternity」は、「永遠」「永久」という意味の名詞です。
英単語
[名詞](固い表現での)永遠、永久
日本語でも、(女性しかわからないかもしれないですが)「エタニティリング」という言葉に使われている単語です。
(*リング全体に宝石をはめ込んだ=永遠を表す指輪で、婚約指輪や結婚指輪としても人気)
「eternity」は名詞ですから、この文では主語になって、
動詞がbe動詞の「is」、後ろの「human feeling=人の想い」が補語になっています。
つまり、
Eternity(S主語)=human feeling(C補語)
の関係にある、英語の呼吸・弐ノ型(第2文型)ですね。
とてもシンプルな文構造でした。
Only human feelings last forever and are undying.
人の想いこそが永遠であり 不滅なんだよ
この文は、
「?」となりがちな文で、動詞が何かをしっかり捉えることが大事です。
実はこの文、動詞は2つあります。
1つめの動詞
1つめの動詞は、「last」です。
「last year=去年」などに使う「last」ですが、実は「動詞」でもあるんですね。
というか、いろんな品詞になる恐ろしい単語です笑。
英単語
[形容詞]この前の、前回の、昨○○、最後の
[副詞]つい最近、この前、前回
[名詞]最後の人、最後の物、終わり、結末
[動詞]続く、持続する、生き続ける、最後まで持ち堪える
ちなみに、
「continue(コンテニュー)も同じく「「続く」という意味ですが、
「last」には、「生き続ける」「最後まで持ち堪える」という意味があるように、使い方に違いがあります。
「続く」の違い
continue=「連続」を意識した「続く」
〔例文〕The news continues after a shord commercial break.(CMの後もニュースを続けます)
last=「最後」を意識した「続く」
〔例文〕A good car will last you ten years.(いい車は10年もつ)
(例文はウィズダム英和辞典 第4版より)
「続く」というのは辞書的な訳であって、
「A last B」で、「AがBまでもつ」という意味合いで使えるわけですね。
だから、
人の想いが永遠に続くことを表すのにふさわしい動詞が、「last」になり、
Only human feelings(人の想いこそが)
last(最後まで生き続ける)
forever(永遠に)
という感じの文にされたわけですね。
まさに、英語の感覚、英語の呼吸ですね。
なお、
「Only~」は、
後ろに来る言葉に「~だけ、~のみ」という意味を追加する副詞で、
「forever」も副詞で、
「永遠に」という意味ですが、動詞に絡める副詞は動詞の後ろにつけるため、「only」と異なり後ろにあります。
もひとつおまけに、
「human feelings」と、1つめの文は単数だったのにここでは複数になっていたかですが、「feeling」は可算名詞です。
1つめの文では「eternity」という不可算名詞を指していたので単数形でした。
2つめの動詞
2つめの動詞が、パッと見文全体の動詞に見えた人もいるかもしれない「are」です。
and are undying
と、前に「and」がついていますが、
動詞の前に来るものはもちろん「名詞(主語)」ですので、この文の主語、「Only human feelings」から続いていると考えることができます。
つまり、「last」と並列関係にあるわけですね。
原作の「人の想いこそが永遠であり(人の想いこそが)不滅である」というニュアンスをしっかり捉えていますね!
なお、
「are」の後に続く「undying」は、
「dying」を否定する「un-(アン)」がついていますね。
今、ジャンプで連載中で人気がある(読み切りから注目していたやつです)、『アンデッド・アンラック』の「アン」です。
それで、
肝心の「dying」ですが、これは「die=死ぬ」の「~ing」です。
「dieing」にはならず、「dying」になるやっかいなヤツです。
それに、「un-」がついて、「死なない」「終わらない」「不滅」という意味になります。
「~ing」でピンと来た方もおられるかもしれませんが、
これは現在分詞(=形容詞)、つまり、
「be動詞+現在分詞(~ing)=現在進行形」
なんです。
というと、
「不滅っている」みたいなムリヤリ訳したくなりますが、もちろんそんな意味ではなく、
「不滅」という状態がずっと続いていく、ということを表しているんですね。
(この辺は進行形を詳しく取り上げたときにやりますが、進行形は未来も表します)
今日のまとめ
超長くなってしまいましたが、それだけ、この言葉は重く、色んな意味が含まれていて、それを再現するために翻訳された(と思われる)ていうことなんだと思ってもらえると助かります。
ちなみに、
原作では「永遠」が2回登場したけど、英訳はそれぞれちがう言葉があてられていたのですが、その辺はまた機会があればお話ししますね!
今日の言葉
Eternity is human feeling.
永遠というのは人の想いだ
Only human feelings last forever and are undying.
人の想いこそが永遠であり 不滅なんだよ
最後までご覧頂きありがとうございました!