おはようございます!
『鬼滅の刃』で英語の呼吸、
今日は、先日国会で某議員が菅首相に問うたあのセリフでいきます!
「弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です」(煉獄瑠火)
煉獄さんが「強き者」というキーワードで思い出した、
母・瑠火(るか)が幼少の煉獄さんに問うた
「なぜ自分が人よりも強く生まれたのかわかりますか」
という問いの答え、母の教えですね。
煉獄さんが鬼にはならないと強く誓い、弱き者を守り、
命がけで鬼を倒そうとしたのは、亡き、強き母からのメッセージがあったからでした。
特に煉獄家はずっと炎柱を務めてきた誇り高い剣士の一族。
そこに嫁いだ嫁として、母として我が子の身だけを案じるのではなく、
ノブレス・オブリージュの精神を持った子を育てる強い意志がありました。
大辞林4.0
ノブレス・オブリージュ
高い地位や身分に伴う義務。ヨーロッパ社会で,貴族など高い身分の者にはそれに相応した重い責任・義務があるとする考え方。
映画でも思わず涙が出るシーンで、
これを国民が総理に向けたい気持ちはわかるにしても、
それを国会議員が総理に使うのは個人的にはどうなん?と思います。
議員は国民の代弁者と考えれば、なくはないのでしょうが、
菅総理は権力者ですが、安倍元総理と違い、
別に「強く生まれた」わけでもないし、
本人的には「弱き人を助けている」気マックスですからね。
議論を生業としている議員には、
その辺を踏まえて「名言」に頼らない言葉がほしいですね。
余談が過ぎましたが、気を取り直して、
この、煉獄瑠火のセリフ
「弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です」
を『鬼滅の刃』英語翻訳版のネイティブ英語でどう訳された?という問題です。
問題
弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です
選択肢
①the weakness
②the weak
③weak people
④weak person
「弱き人」がどれで翻訳されているか?という問題ですね。
目次
答え
正解
弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です
②の「the weak」が正解でした!
英語のテストであれば③の「weak people」でも間違いではないんですが、
あえて「the weak」を使った理由があるのです。
解説
the+形容詞=名詞
普通、定冠詞「the」は、
the pen=(その特定の)ペン
the police=(その特定の)警察官
のように、ある特定の人や物(=名詞で表せるもの)を示すために使います。
選択肢にあった「the weakness」は、
the+名詞ですが、「(その特定の)弱点」という意味ですね。
しかし今回は、
the weak
と「weak=弱い」という形容詞が来て、
後ろに名詞が来ず動詞「is」が来ていた表現でした。
これは極めて英語的な表現ですが、
定冠詞「the」+形容詞で、
「○○な人(々)」「○○(なもの)」という意味の名詞になります。
ポイント
the+形容詞=○○な人々*、○○な物*
*複数を指すが単数形(peopleと同じ)
the weak=弱者、the young=若者、
the rich=金持ち、the poor=貧乏人、
the beautiful=美、the true=真実
「the」が名詞の前に置くものだから、
「the」の後ろに形容詞を置いても名詞にしちゃえる、
といういかにも英語らしい合理的な発想です。
「weak people」じゃなかった理由
ちなみに「the 形容詞=○○な人々」という意味ですから、
「the weak = weak people」
「the rich = rich people」
として書き換えても、意味は同じになります。
(人々というひとかたまりだから、いずれも動詞は「is」になります)
なのに
なんであえて「the+形容詞」を使うかというと、その形容詞を使いたいから笑。
日本語でも、あえて仰々しくいいたい時ってありますよね?
今回は、原作の「弱き者」という言い方が、
強く生まれた者との対比で使われている、特別なニュアンスを残す表現でした。
特別感を出すときの英語の表現は「the」ですね。
たしかに、
「weak people」は文法的にはまったく間違いじゃないし、
口語(会話)ではむしろ「weak people」になるそうです。
これが「弱い人たちを助けようね」
みたいなシーンなら、
「weak people」でもよかったでしょうね。
しかし、
瑠火さんの「弱き人」という言葉は、
ある意味「遺言」に近い、格言めいた言葉ですから、
より文語的な「the weak」が使われて訳された、ということです。
原作の雰囲気を忠実に再現した訳でした。
Helping the weak is the duty of those born with strength.
弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です
文全体は、長くなるのでシンプルに解説します。
helping the weak(弱者を助けること)
と
the duty of those born with strength(強く生まれた者の責務)
をbe動詞「is」で繋ぎ、
Helping the weak = the duty of those born with strength
(弱者を助けることは強く生まれた者の責務)
のように、S=Cの形になる文ですね。
後ろの文がちょっとやっかいで、
the duty of=~の責務
with strength=強さを伴って
はわかりやすいですが、その間の
those born
はちょっとわかりにくいですね。
どう考えても
「born」の前に関係代名詞が省略されているのですが、
主語がない節になるので、目的格とならず省略できないだろ?
と、私の英語力では最初読んだとき、サッパリわかりませんでした。
手元の文法書を見てもわからなかったのでお手上げだと思ったのですが、
以下のサイトを見たらスッキリ解決しました!ありがとうございます!
謎の「those born」の理由
「those」は「that」の複数形で、
ネイティブからしたら便利なのでしょうが、
日本人からしたら時々特殊な使われ方をします。
今回の「those born」はその一つで、
「those」はその後ろに「people」が隠されていて、
「born=生まれた」は「bear」の過去分詞だからbe動詞を必要とし、
それを繋ぐのが関係代名詞「who(目的格)」だったんですね。
そして、上記サイトによると
なんとネイティブは「who+be動詞」を省略するらしく、
英語ネイティブは結構使う表現だそうです。
(オバマ大統領も使っていたとか…逆に、シンプルな文を書いていたトランプ大統領との違いでしょうか)
つまり、
those people who are born
というのが本来あるべき姿で、
赤字の部分がまとめて省略されているんですね。
だから、
those who
=those people who are born
=生まれたそれらの人々
⇒生まれた人
という意味になり、
the duty of those born with strength
=強さを持って生まれた人の責務
⇒強く生まれた者の責務
と訳せるわけですね。
いやぁ、奥が深い・・・でも、元々の言葉もそうなので、これくらいがちょうどいい・・・かな?
今日のまとめ
今回は英語ならではの表現ばかりで構成された文でしたので、難しかったと思います。
ひとまず、
the+形容詞=○○な人々
というのをおぼえておければOKでしょう!
(続きのセリフは長くなったので次回に持ち越します)
今日の言葉
Helping the weak is the duty of those born with strength.
弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です