英語では、
日本語では「生物」が主語なのに、
英文にすると「無生物」が主語になることが多々あります。
今日はそんなお話を、
『鬼滅の刃』のネイティブ英語版『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba』の一コマを例文にしてご紹介します。
目次
問題!
今回のお題は、英語版『鬼滅の刃』単行本6巻の柱合会議のシーンから。
柱合会議に連れてこられた炭治郎の処遇を「斬首にすべきだ」という意見があったのち、
「ならば俺が派手に頸を斬ってやろう」と言った宇髄さんの、続きのセリフですね。
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今回はこの「誰よりも派手な血飛沫(しぶき)を見せてやるぜ もう派手派手だ」を、
英語版でどう訳されたか?を見ていきながら、使役動詞の使い方、使われ方を見ていきましょう!
問題
誰よりも派手な血飛沫(しぶき)を見せてやるぜ
※panache=華々しさ
Really flashy-flash!
もう派手派手だ
選択肢
①let
②have
③get
④make
どの使役動詞を使うか?という問題ですね。
宇髄さんの嫌いな「地味」に難しい問題です。
答え
正解
誰よりも派手な血しぶきを見せてやるぜ
Really flashy-flash!
もう派手派手だ
②の「have」が正解でした!
例文解説
「派手」をシンプルに訳すわけじゃなく、
宇髄さんが言っているニュアンスが伝わるようになっている、という所に注目しましょう。
Even the blood splashes will have panache!
誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ
主語が「the blood splashes=血飛沫」
(述語)動詞が「will have」
の文ですね。
文頭の「Even」は
意味を強調する副詞です。
英単語
[副詞]でさえ、たとえ、いやむしろ、実際、さらに
[形容詞]平らな、均等な、一定の
[動詞]等しくする、平たくする
原作は、
「誰よりも派手な血しぶきを見せてやるぜ」
となっていますので、
日本語の感覚だと比較級が必要になる文なのですが、
このセリフはあくまでも
「ならば俺が派手に頸を斬ってやろう(I'll cut off his head with style!)」
というセリフの続きですから、
「むしろ、誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ」
ということが宇髄さんの言いたいことですよね?
なので、前の文を強調する意味で、
副詞「Even」を文頭に持ってきて、比較的な表現を再現しているわけですね。
「見せる」が「have」になる?「無生物主語」
その後に続く
the blood splashes
は
the blood=その血の
splash*=飛沫(しぶき)
という名詞のかたまり(名詞句)で、この文の主語になります。
*「splash」は可算名詞なので複数形になっています。
原作は、
「(俺が)誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ」
と主語が隠れているので、
日本語の感覚だと主語を「I」とするべきですが、
実際の英訳は原作と異なり、
主語が「血飛沫」に変更されているわけです。
この「英語の感覚(英語の呼吸)」は、
日本人にはなかなか理解しがたいですが、
文法用語で「無生物主語」というやつですね。
この「主語の変更」に伴い、
以降に使う言葉がまるっと変わり、
動詞が「見せる=show」ではなく、
「have」に変更になっているのです。
無生物主語「have」
無生物主語の時に使う動詞は、
「let」「make」「have」など使役動詞になります。
「使役動詞」というとなんだか難しい表現ですが、
「~させる」という意味になる事が出来るやつですね。
今回使われた「have」もその一つで、
the blood splashes will have ~
=血飛沫に~を持たせてやるぜ
という風に使う事が出来ます。
英語は一番最初に言いたいことを持ってくる言語ですから、
無生物主語を最初に持ってくることで、
それ(この場合は血飛沫)にフォーカスしてほしいわけですね。
この「感覚」は頭ではなかなか理解しがたいので、
常に英語の感覚で考える「英語の呼吸・常中」で英語を理解する必要があります。
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洋菓子のよう?「panache」
今回は、使役動詞「have」の後ろに
「panache」
という中々見慣れない名詞が出てきました。
英単語
[名詞]華々しさ、気取り、見せびらかし、羽根飾り
発音がなんとなくフランス菓子みたいなのは、
ラテン語⇒フランス語⇒英語となった言葉だからですが、
元々は、兜などにつける「羽根飾り」、つまり、
なくても困らないのにあえてつける装飾
を表す言葉です。
(宇髄さんのアクセサリーもpanacheですね)
普通に頸を斬れば出てくる血飛沫を、
will have panache
=華々しさを持たせたい
ということで「派手」という言葉の代わりにして
Even the blood splashes will have panache
=むしろ血飛沫に華々しさを持たせてやるぜ
⇒誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ
という英訳になっているわけです。
Really flashy-flash!
もう派手派手だ
原作では「派手」という言葉を散々使ってきた宇髄さんですが、
これまでの英訳では、
「ならば俺が派手に頸を斬ってやろう(I'll cut off his head with style!)」
「誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ(Even the blood splashes will have panache!)」
と、まったく違うやり方で「派手」が表現されていました。
しかし、ここでは違っていましたね。
「本当に、実に」という意味で有名な「Really」という副詞で強調しながら、
似たような「flashy」と「flash」を組み合わせた、
「flashy-flash」で表現していました。
英単語
[形容詞]派手な、一瞬華やかな
英単語
[動詞]光らせる、パッと照らす、見せびらかす
[名詞]閃光、フラッシュ、ひらめき
[形容詞]派手な
両方とも「派手な」という意味がありますが、
それぞれをハイフンで結びつけ、
ひとかたまりの形容詞にしているんですね(複合形容詞)。
この、
複合形容詞で代表的なのは、「7-year-old」ですね。
「7 years old」と違い単数形になるのは、ひとかたまりの形容詞だからなんですね。
この辺の詳しい話は他のサイトをご覧いただくとして、
原作の日本語が、
「派手派手だ」と同じような言葉をくり返したかたまりとしているため(日本語では名詞+形容動詞)、
英語でも、
似たような言葉をくり返したかたまりにした、と考えるとわかりやすいですね。
ちなみに、
英語で「flashy-flash」という表現があるかというとどうもないようで(当たり前だ)、
ググると、
まさかの、マンガ『ワンパンマン』に出てくる、「閃光のフラッシュ」の英語名でした(汗)。
今日のまとめ
今回の文はいずれも英語的な訳し方をした文で、
難しい文法表現を使っている感じがしてしまいますが、
「強調したいときは副詞から始める」
「強調したいものを主語に持ってくる」
という基本的な英語表現でもありますので、この英語の感覚(英語の呼吸)に慣れるといいですね!
今日の言葉
誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ
Really flashy-flash!
もう派手派手だ