中学2年で習う、助動詞「will」。
短縮するときは「I will=I'll」にするとか、
否定形は「I will not=I won't」にするとか、
そういった「単純作業」はすぐおぼえられますから、一見簡単です。
しかし、いざ使うときになったらどうでしょう?
使いどころに戸惑いませんか?
しかしご安心下さい。
ここ、全集中・英語の呼吸は、
ネイティブ英語で翻訳された『鬼滅の刃』英語版を教材として、
「will」の正しい使い方を体に叩き込んでいきます。
目次
助動詞「will」の本質
助動詞とは何かというのはひとまず置いておいて、
「will」のことが百聞は一見にしかずでよくわかるシーンをまずご紹介します。
「will」が使われたワンシーン
第1話で、鬼になった炭治郎の妹・禰豆子が冨岡義勇に奪われた後のシーンです。
こちらのページに、
いくつ「will」が使われているかわかりますか?
正解は、7個です。
7個もあった?
ありましたありました。
「will」の他に「won''t=will not」も入れれば、7回も「will」が出てきたのです。
学校では、
「will」の日本語の意味を、
「~するつもりだ、~だろう」と教えてもらいます。
(※昔は「未来形」と教えてもらいましたが、今は、「未来・意志」と教えられることが多いです)
それを考えると、日本語的に
「~するつもりだ、~だろう」
を7回も使うシチュエーションってあると思います?
ないですよね??
(役人や政治家ならあるかもしれないけど)
とにかく必死な炭治郎
ましてこのシーンは、
大事な妹の禰豆子の命をどうこうするというシチュエーションなので、
そんな役人のような表現を使うのが適しているとは思えません。
実際にこのシーンのセリフを思い返してみればわかりますよね?
英文を原作の文と対比してみます。
英日対訳
[炭]I won't let her hurt anyone!
俺が誰も傷つけさせない
[炭]I'll find a way to cure her!
絶対に治します*
[炭]I'll make her human again!
きっと禰豆子を人間に戻す*
[冨]She won't get better.
治らない
[冨]A human who becomes a demon cannot go back.
鬼になったら人間に戻ることはない
➡昔から普遍的な一般論なので「現在形」
[炭]I'll find a way! I swear! Please don't kill her!
探す!! 必ず方法を見つけるから殺さないでくれ
[炭]I'll also find the one that killed my family!
家族を殺した奴らも見つ出すから
[炭]I'll do all that, so... so... so...
俺が全部ちゃんとするから だから だから…
※swear=誓う
*原作と順序が逆になっている
このように、
冨岡さんの一文を残してすべて「will」が使われていましたが、
「~するつもりだ、~だろう」
という訳は一言も入っていません。
入ってなくても、ニュアンス的に
「~するつもりだ」と読み取れるセリフもありましたが、
でも、炭治郎のこの必死な姿に、
「~するつもりだ、~だろう」
というあやふやな言い方がふさわしいと思いますか?
むしろ、
「するから!するから!」
と必死にアピールしているわけじゃないですか?
こちらの方がよっぽど「will」の本質を体現しています。
「will=~するつもりだ」では説明できない
学校英語は「文字」ベースの英語で、
単語ごとに「意味(訳)」があるとして教えています。
だから「will」には、
「~するつもりだ、~だろう」
という訳がつけられます。
しかし、
その訳を当てはめると
おかしな日本語訳ができることも少なくありません。
たとえば、
「I'll go shopping.」の訳は、
「私は買い物に行くつもりだ」か、
「私は買い物に行くだろう」
となります。
でも、日本人の感覚として、
「私は買い物に行くだろう」
という訳はヘンなので、
「私は買い物に行くつもりだ」
という訳が正しく思えますよね?
しかし、いずれも不正解です。
「I'll go shopping.」は、
「買い物に行ってくる/行くわ」
と訳すのが正解です。
この訳には、
「だろう」とか「つもり」とか
不確かな感じが一切ないですよね?
先ほどの炭治郎と同様の、
「やるから!」
と同じように、
「行く!」
という、今の「意志」を感じますよね。
これがつまり、「will」の本質です。
「will」の本質
昔と今では、英語教育の内容もじゃっかん変わり、
「will=未来形」
のように単純に教えることは少なくなり、
「will=意志、未来」
として習うようになりました。
あくまでもその訳(の一つが)
「~するつもりだ=意志、~だろう=未来」
なんですね。
なので、状況によっては、そう訳すこともあれば、先ほどのような訳になることもあるのです。
あくまでも「訳」は、参考にしかなりません。
「will」の本質は、
「訳」じゃなく「状況」にあるんです。
だからこそ、特に先ほどの炭治郎と義勇のやりとりのように、
意志のwill
炭治郎⇒今考えついた意志
〔例〕
I'll find a way to cure her!
絶対に治します
未来のwill
義勇⇒今から先の未来
〔例〕
She won't get better.
治らない
と、will」一つで「意思や未来」を表すことができるのです。
「will=~するつもりだ、~だろう」
という日本語訳の感覚に引っ張られると、おかしなことになりかねないわけですね。
あくまでも、
「今、未来の話をする」という時に使うのが「will」であり、
だからこそ、
「意志」にもなり「未来」にもなるんだ、と理解しておくことが大事です。
「will+be動詞」
それではここからは具体的に、
「will」を使うシーンをご紹介して、
使い方を学んでいきたいと思います。
「will」は助動詞なので、後ろには動詞が来ます。
そしてその動詞は原形になる、というのがどの助動詞にも共通したルールですね。
それでは、
後ろに「is」とか「are」のような「be動詞」が来る場合はどうなるか?
「will be」になるんですね。
「be動詞」の原形が「be」だから、「be動詞」と言うんです。
「will be~」を使う時はどういう時か?
以前、
「be動詞」は「状態・ステータス」を表す記号のようなもの、
というお話をしました。
-
参考鬼滅の刃の名シーンでわかる「be動詞」の役割
今回は、 簡単なように見えて多くの人がよくわかっていない 「be動詞」の本当の役割について、 いつものように『鬼滅の刃』英語版から大事なポイントを学びましょう。 Demon Slayer: Kimet ...
続きを見る
だからといって、
「will」を使って、状態・ステータスの「意志・未来」になると言われても、ピンと来ませんよね?
これは、
「be動詞の現在形」と、
「will+be動詞」が
同時に使われているシーンを見るとよくわかります。
こちらは、
珠世と炭治郎が真面目な話をしている間に愈史郎が考えていたのは、珠世の美しさのことだったという、
シリアスな展開なのにちょいちょいコメディが入る鬼滅らしいワンシーンから。
このシーンでは、
最初のセリフが「be動詞の現在形」、
二つめのセリフ(の節が)「will+be動詞」になっていますね。
愈史郎
Lady Tamayo is beautiful again today.
珠世様は今日も美しい
➡過去から今も続いているので現在形
I bet she'll be beautiful tomorrow too.
明日もきっとそうだ
➡今から未来の話をしているので「will be」
※Lady=夫人、(女性につける)様
※again today=今日もまた
※I bet=賭けてもいい⇒きっと
「意志」というより「未来」の意味になる事が多いです。
なので、この場合は、
「she is beautiful(彼女は美しい)」を
未来もそうだ、ということで
「she will be beautiful tomorrow too(彼女は明日も美しい)」
「明日」という未来の話をするのに「will」を使っているわけです。
(だからテストなどで「tomorrow」があったら「will」が入ります)
そうやって、
現在も未来も美しいと思う愈史郎の「珠世愛」を英語でも表現しているのです。
なお、
ここで過去形を使えば当然、「美しかった」になりますので注意が必要です。
あんな時にも「will be」
「will be」は、
ふだんbe動詞を使う時なら使える表現ですので、たとえば天気のことも「will」を使って、
「It will be rain.」
と言うことが出来ます。
この文、状況によって訳が変わり、
今にも雨が降りそうかな、という時は、
「雨が降ってくる」
天気予報で雨だと聞いていたときなどは、
「雨が降るだろう」
というような訳になります。
「will」に日本語と同じ訳がある、と考えるのではなく、
今より未来のことを語るときに使う「記号」なんだ
という風に理解しておくと、混乱が少ないでしょう。
このように、
「be動詞」は「状態・ステータス」を表す記号であるのと同様、
「will be」も、今より未来のことを語るときに使う「記号」
なんだと理解しておくと、
「will be」が「未来」を表すことが多い理由がわかります。
「will be」で「意志」を表す時
とはいえ、「will be」でも「意志」を表現することは稀にあります。
例えばこちら、
鼓の鬼・響凱(きょうがい)の屋敷で、炭治郎が少年たちに「行ってくる」と言ったシーンで使われたのが、
「I'll be back.」です。
映画『ターミネーター』の名台詞としても有名で、「行ってくる」「戻ってくる」と言う時の定番表現です。
「行ってくる」は他にも、「I'm on my way」という表現もありましたが、
今回は、「必ず戻ってくるから」と言った後のシーンなので、
「be back(戻る状態になる)」という意味になる、
「I'll be back」で訳したんですね。
このように、
「will be」で「意志」を表すこともあるのです。
それでも、
「will be」のときは、基本的に「未来」を表すことが多いのは事実です。
となると、「will+一般動詞」の時はどうなるか?
そう、「意志」として使うことが多くなるわけです。
「will+一般動詞」
一般動詞は「行動」や「考え」を表現するために使う動詞です。
だから必然的に「意志」を含んだ表現になりやすいです。
今度は、
「will+一般動詞」のいくつかの例を見ながら、
「意志」を表す「will」の使い方、意志の度合いの違いを理解してもらおうと思います。
その場の「思いつき」の「will」
「意志」というと、なんだか凄い重い感じがしますが、実際に「will」を使うことは日常的にあります。
特に、「I will」の省略形「I'll」は、会話の節々に当たり前に登場してくる表現です。
たとえばこちら。
善逸と炭治郎が仲間になるキッカケとなった、
心配して声をかけてくれた女性に「結婚してくれ」としがみつく善逸のことを、炭治郎が止めようとしたシーンですね。
鎹鴉ならぬ鎹雀であるチュン太郎(本名:うごき)の求めに応じて、炭治郎が放った、
「何とかするから」というセリフに注目。
これを英語で表現すると、
「I'll do something!」
というように、
「will」と「動詞do=する」を使って表現していますね。
このように、瞬時に思って、
これから行動に移す、言いたいことを伝える、という時も「will」を使います。
最初の炭治郎と義勇のシーンもそうでしたね。
そのため、
いつもグダグダしている善逸はあまり使いませんが、
前向きな炭治郎、伊之助、煉獄さんはよく使います。
伊之助
I'll save them all!
どいつもこいつも俺が助けてやるぜ
You'll all be bowing to me in thanks!
須(すべから)くひれ伏し!! 崇め讃えよこの俺を!!
※be bowing=ひれ伏すの現在進行形
煉獄杏寿郎
I'll make you a great swordsman!
立派な剣士にしてやろう
I'll look after you all together!!
みんなまとめて面倒みてやる!!
「決意」を表す「will」
「意志」よりもっと強い「決意」にも、「will」を使います。
特に「意志」を強調したいわけですから、
「I'll」と短縮するよりも、
「I will」という形にすることが多いです。
決意と言えばこのシーン。
柱合会議の前に行われた、鬼を連れた鬼殺隊士・竈門炭治郎の処遇をどうするのか?
という裁判の後シーンで、お館様が炭治郎に言った、
「十二鬼月を倒しておいで」
という言葉に不思議な高揚感をおぼえた炭治郎が、
十二鬼月を通り越してラスボスの鬼舞辻を倒すと宣言し、
結果としてだだ滑りしたわけですが、このセリフには、
強い「意志」、
つまり「決意」がにじみ出ていますよね?
こんな時も「will」です。
英日対訳
I swear... Nezuko and I will defeat Muzan Kibutsuji!
俺と禰豆子は鬼舞辻無惨を倒します!!
※defeat=〔動詞〕倒す、打ち負かす
(直訳:俺は誓います、俺と禰豆子が鬼舞辻無惨を倒すと)
We will not fail!!
俺たちが必ず!!
※fail=〔動詞〕失敗する
(直訳:俺たちは失敗しない)
I'll use my blade to break the chain of sadness!
悲しみの連鎖を断ち切る刃を振るう!!
※use=〔動詞〕使う
(直訳:俺は悲しみの連鎖を壊すために刃を使います)
特にこういった、
「意志」を「決意」として強調したいときには、
「will」を省略しない方が、意志の強さが伝わりやすいです。
「will」そのものが「意思を表す記号」のようなものになっているわけですね。
そのため、
決意を示すときの返事に、
「OK, I will.(わかった、そうする)」
という意志だけ示す答え方もあります。
(動詞は省略されているのです)
このように、
「will」は「未来」だけでなく、
「意志」を表すのに使う大切な助動詞だということがわかっていただけたでしょうか?
本日のまとめ
「will」に完全に対応する概念が日本語にはないため、
ついつい日本語訳に引っ張られがちですが、
「will」を使うシーンから、
「will」のイメージをしっかりと理解しておくほうが、よっぽど正しく「will」を理解できます。
ポイント
「今、未来の話をする」という時に使う記号が「will」。
だから、使いどころや後に続く動詞によって、「意志」にもなり「未来」にもなる。
「will」は助動詞なので、後ろには動詞の原形が来る
なお、
「will」から始まる疑問形については、また別途ご紹介しますね。
「will」と「be going to」の違いについてはこちらでご紹介しています。
こちらもCHECK
-
鬼滅の刃の名シーンでわかる「will」と「be going to」の違い
おはようございます。 今回から、学校で習う英文法で、わかりにくいものを、マンガ『鬼滅の刃』英語版を使ってわかりやすく解説していきます。 第1回は、中学校だと「書き換え」問題がある関係で「同じような意味 ...
続きを見る